テリーの後任候補者から見る理想ユニット
人種差別発言疑惑、イングランドサッカー協会との関係悪化と、最悪のシナリオの末にイングランド代表からの引退を発表したジョン・テリー。その決断に関しては、各方面から様々な意見が飛び交っているが、何よりも注目されるのが、これまで代表のDFラインを束ねてきた彼の後任を誰が務め、そして、どのようなセンターバックコンビが誕生するかである。
『caughtoffside』のライター、ダン・キルパトリックは後任候補として4人の名前を上げたが、ここでは彼がリストアップしたプレーヤーの可能性を見ていこう。
リオ・ファーディナンド(33):マンチェスター・U所属
身体的な衰えは隠しきれないが、守備者としての能力を見れば、依然としてイングランド人の中ではトップクラス。実際、ロイ・ホジソンも就任以降は彼を積極的に起用しており、万全の状態であれば、今年行われたEUROにおいてもレギュラーポジションを掴んでいた可能性は高い。だが、とにもかくにもネックは年齢面と体調面。テリーが抜けることによって失った経験値を補填するためには打ってつけの人材ではあるが、元々コンディション面に問題を抱えるベテランDFを2年後のW杯まで使い続けることは無謀。彼に頼るのであれば、新たな人材を発掘したのが今後のためにもなるのではないだろうか。
アントン・ファーディナンド(27):QPR所属
彼自身に悪意がなかったとはいえ、テリーが代表を追われることとなった張本人を推薦するのは皮肉なものだが、実力を考えれば、ノミネートされてもおかしくないタレント。少年時代から兄である「リオを上回る才能の持ち主」ともてはやされた割には、順調に成長曲線を描けなかったが、ウェストハム、サンダーランド、QPRとチームを変えるにつれて、ようやく覚醒。スピード、強さ、巧さの3拍子を兼ね備えるだけではなく、統率力、ユーティリティー性もあることから、一度試してみるのも悪くないはずだ。
スティーヴン・コールカー(20):トッテナム所属
「今後10年」という長いスパンを念頭に入れるのであれば、現時点では、フィル・ジョーンズらと共に「DFラインの中心に成り得る人材」と言えるだろう。少年時代に4年連続で400m走の地区チャンピオンに輝いたこともあるように身体能力は申し分なく、やや細身の印象はあるが、若手ながらその筋肉は既に完成系とも言える質にある。また、肝心な守備面も、たとえ、一度抜かれたとしてもすぐに追いつけるスピードを活かした対人戦はなかなかのレベルだ。だが、上述のように、将来性を考えれば興味深い候補者であることは言うまでもないのだが、少なくともこのタイミングで登用するタレントでないことはたしか。現実的になるならば、まず、彼がトッテナムでレギュラーポジションを掴み、安定したプレーを継続的に行えるまで待つべきだ。
ライアン・ショウクロス(24):ストーク所属
プレミアリーグでも屈指の空中戦の強さとリーダーシップを備えた、いかにもイングランド産らしいストッパー。彼が持つその長所はテリーとも近いものがあり、今後の将来性を考えても面白い存在だが、アジリティーや足元の技術の低さは気になる所。また、かつてはアーロン・ラムジーに大怪我を負わせたことがあるように、時折、乱暴なタックルを犯す嫌いがあり、そこも大きな不安点。国際舞台ではプレミアリーグよりも多くのファールを取られる可能性が高いだけに扱い難いか・・・。
今回のテーマとはやや離れていたせいか、代表常連組のジョリオン・レスコット、ギャリー・ケイヒル、フィル・ジャギエルカは選考漏れとなったが、テリーの穴埋めを含め、今後どのようなセンターバックユニットが構築されているのかは大変興味深いところだ。
なお、個人的に理想とするユニットを言わせてもらえるのであれば、一時はマンチェスター・ユナイテッドでもスタメンの座を掴みかけたクリス・スモーリングとフィル・ジョーンズを推したい。
おそらく、今回の選考から外れたのは、怪我で離脱中だったことが原因にあると思うが、それぞれ20歳、22歳と若く、さらに、実力や経験も同年代のプレーヤーの中では最高峰。彼らがクラブレベルでもしっかりとした地位を築き、それを代表に還元できる仕組みが整えば、強力なユニットが出来上がるのではないだろうか。
強烈なキャラクターと迫力のあるディフェンス、そして、機を見た攻撃参加で相手チームに恐怖を与えられるジョーンズ。正確で冷静なインターセプト、ハイセンスなフィード能力で攻撃の起点にもなり得るスモーリング。彼らの数年後が明るいものであれば、その時はスリーライオンズにも光が射していることだろう。