11月3日に国立競技場で行われたナビスコカップ決勝「清水エスパルス×鹿島アントラーズ」の一戦で、延長戦を制し、16冠目を達成した鹿島アントラーズ。この試合でアントラーズが披露した老獪な試合運びは流石の一言だったが、戴冠の要因のひとつとして「92年生まれ」の2人(昌子源、柴崎岳)の活躍が挙げられるだろう。
今回のロッシの鹿島リポートでは、ナビスコ杯決勝という大舞台で輝いた2人にスポットライトを当てていきたい。
・抜擢に応えた昌子
昌子、柴崎と同じく「92年生まれ」の筆者がこの試合で注目したのは、百戦練磨のベテランが多いアントラーズが勢いのある若武者揃いのエスパルスをどのように抑えるかというところであった。エスパルスには、史上最年少でニューヒーロー賞を受賞した石毛秀樹、Jリーグ屈指のアタッカーである大前元紀、その大前と攻撃陣を形成する高木俊幸など注意が必要なタレントが多く、ジョルジーニョ監督がどのような対策を練るのか注目が集まった。
指揮官がこの大一番で取った秘策は昌子の抜擢だ。将来性豊かなセンターバックとしてその才能が高く評価されている昌子だが、決勝の舞台で、しかも慣れない左サイドバックとして起用したことには驚かされた。
「経験豊富な新井場徹じゃなくて大丈夫なのだろうか・・・」
ゴール裏でキックオフの笛を待っていた筆者は一抹の不安を覚えた。
だが、そんな筆者の心配は杞憂に終わる。大前と対峙した昌子は持ち味とする対人プレーの強さを存分に発揮し、準決勝第2戦でハットトリックを達成した大前をほぼ完璧に抑え込んだのだ。今シーズンはまだリーグ戦でのスタメンがなかった19歳だが、大舞台で強心臓ぶりをアピールした結果となった。
・サッカーセンスを見せつけた柴崎
昨シーズンのナビスコ杯決勝で堂々たるプレーを披露した柴崎は、今シーズンも2得点の大活躍を見せMVPを獲得。そのスター性とサッカーセンスを改めて全国のサッカーファンに印象付けた。
青森山田高時代から「超高校生級」と騒がれ、鳴り物入りでアントラーズに入団した柴崎だが、周囲からの注目と期待に押しつぶされることなく、ここまで順調な成長を見せている。特に、「ゲームの流れを読む力」、「視野の広さ」、「落ち着き払ったプレー」といった持ち味は偉大な先輩である小笠原満男と比べても遜色ないと言っても過言ではないだろう。
そして、昌子、柴崎の2人に共通しているのが「落ち着き」だ。満員の国立競技場は決勝特有の独特な雰囲気に包まれていたが、その雰囲気をものともしないプレーぶりからは2人のメンタリティーの強さがうかがえた。後に名を馳せる選手には、年齢に似つかわしくない「落ち着き」が例外なく備わっているものだが、昌子、柴崎の両名は共にこの条件を満たしているだけに、今後のアントラーズを背負う選手として、特大の期待を寄せたいところだ。
・若手を支えるベテランたち
今シーズンのアントラーズはナビスコ杯を制したものの、リーグ戦では中位に沈むなど、本領発揮という訳ではない。そんな中、前述した昌子、柴崎に加え、大迫勇也、遠藤康といった若手が着実に成長を遂げていることは明るいニュースだろう。
彼らの成長は、経験豊富なベテランたちの存在抜きには語れない。大前を封じた昌子の陰には新井場の、ナビスコ杯で得点を量産した大迫の陰にはジュニーニョのアドバイスがあった。また、決勝では百戦錬磨の新井場、中田浩二、本山雅志、ジュニーニョがベンチに控えていたが、このことはスタメン出場した若い選手たちが思い切って、のびのびとプレーできる要因になっていた。ベテランたちが幅を利かせるのではなく、若手、中堅にアドバイスを送る環境こそがアントラーズの強みだろう。
残すところ3節(11月7日現在)となったJリーグでは、16位のガンバ大阪と勝ち点差が5と予断を許さない状況が続いている。残りの試合もベガルタ仙台、名古屋グランパス、柏レイソルと難敵揃いだが、ベテランたちの経験を生かし、この正念場を乗り切って欲しいところ。J1残留、そして元日の国立でもアントラーズの試合が観れることを祈りつつ、今後も精一杯声援を送りたい。
2012/11/5 ロッシ
※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。
筆者名 | ロッシ |
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プロフィール | 『鹿島アントラーズと水戸ホーリーホックを応援している大学生。ダビド・シルバ、ファン・ペルシー、香川真司など、足元が巧みな選手に目が無いです。野球は大のG党』 |
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