8月14日に宮城スタジアムで行われたキリンキャレンジカップ2013対ウルグアイ戦で2-4というスコアで敗れ去ったザッケローニ率いる日本代表。かつてないほど日本代表に対する注目が高まっている中で行われたこの一戦では、南米屈指の強豪相手に「世界」との差を改めて思い知らされる結果となった。
先日行われたコンフェデレーションズカップ、東アジア選手権、そして今回のウルグアイ戦ではそれぞれに課題と収穫が少なからずあった。今回の当コラムでは、「日本代表の論点」と題し、現在の日本代表を考える上で論ずべきポイントを述べていこうと思う。
論点① スタイル変更の是非
コンフェデ杯では3試合で9失点を喫し、今回のウルグアイ戦では4失点と、世界の強豪相手に複数失点が目立っている。この守備崩壊を受けて、一部では2010年の南アフリカワールドカップの時のようにDFラインを低く設定し、カウンターに活路を見出すスタイルへの変更が叫ばれているようだ。しかし、筆者はスタイル変更の必要性を感じていない。それは、ザッケローニが築きつつあるスタイルが強豪相手にも通用しているからだ。
ザッケローニが標榜するのは、最終ラインを高く保ってコンパクトな守備ブロックを形成し、積極的に高い位置からボールを取りに行くスタイル。このスタイルでカギを握るのがラインコントロールであり、決してフィジカルに恵まれている訳ではない今野泰幸をザッケローニが重用している理由はそこにある。だが、強豪との試合では個人の能力が圧倒的なストライカーと対峙しなければならないことが多く、ウルグアイ戦でもルイス・スアレス、ディエゴ・フォルランといった世界的ストライカーに浅いDFラインの背後を突かれてしまった。この課題を解決するにはやはりDFラインを現行よりも低くする必要があるのだろうか。個人的にキーマンとなり得る存在だと考えているのが、吉田麻也と交代でピッチに立った伊野波雅彦だ。
伊野波は179cmとセンターバックとしてはフィジカルに恵まれている方ではない。しかし、そのスピードは抜群で、豊富なスタミナを誇るなど、身体能力の高さは折り紙つきだ。また、元々はボランチだったこともあって足下の技術に長けており、センターバックにビルドアップ能力を求めるザッケローニの眼鏡に適う存在である。これまでと同様にDFラインを高くすることにこだわるのであれば、スピード自慢の伊野波をカバーリング能力に長ける今野の新相棒として重用するのがベストだろう。とはいえ、この新コンビには絶対的な高さが不足しているだけに、189cmの長身を誇る吉田あるいはエアバトルに自信を持つ栗原勇蔵を対戦相手によって使い分ける形が理想である。
前半は完全にゲームを支配したコンフェデ杯のイタリア戦(結果として3-4で敗れる)を見る限り、ザッケローニが標榜するアグレッシブなスタイルは強豪相手にも確実に通用している。前回大会と同様に本大会直前になって守備的な戦術を導入する可能性はあるものの、個人的には現在のスタイルを(結果はどうであれ)貫いてほしいと思っている。日本サッカー界の更なる成長のためにも、「受動的」ではなく「能動的」なスタイルの構築を望みたいところだ。
論点② 1トップの人選
ほぼスタメンが固定されている現在の日本代表において、唯一流動的なのが1トップのポジションだ。ザッケローニは周囲を上手く活かすことができる前田遼一を重用してきたが、積年の課題となっている決定力不足は解消されず、最近ではトップ下が本職の本田圭佑をセンターフォワードとして起用する“ゼロトップ”をトライするなど、試行錯誤が続いてきた。
そんな中、彗星のごとく現れたのが、初キャップを刻んだ東アジア選手権で得点王に輝いた柿谷曜一朗だ。今回のウルグアイ戦では、早速1トップで起用され、ゴールこそなかったものの、随所で才能を感じさせるプレーを披露。試合前からメディアの注目度が高く、かなりのプレッシャーがあったことと想像するが、その重圧にも屈しないメンタルの強さを見せつけた。
Jリーグで好調を維持する柿谷のプレーは希望を抱かせるものであり、今後の可能性が大きく膨らんだと言える。とはいえ、柿谷は純粋なセンターフォワードすなわち「9番」という訳ではなく、セカンドトップが本職のプレーヤーだ。シュート技術の高さとゴール前での落ち着きは際立っているが、ポストプレーや空中戦は得手としていない。それだけに、ポストプレーに定評があり、連携面もバッチリな前田、ウルグアイ戦で途中出場し、献身的なプレーを見せてくれた豊田陽平といった「9番」タイプのストライカーたちと柿谷を戦況に応じて併用するのがベストだろう。
典型的な「9番」タイプのストライカーには、圧倒的な高さが武器のハーフナー・マイク、東アジア選手権で存在感を見せた大迫勇也、Jリーグの得点王争いでトップに立つ(8月15日現在)渡邉千真ら有力な候補者たちが揃っている。いずれにせよ、決定力不足を解消しうるタレントは多いだけに、ザッケローニがどのような人選をするか楽しみである。いよいよその比類なき才能を完全開花させた感のある柿谷が1トップの座を射止めるのか。それとも、前田ら「9番」タイプのストライカーたちが意地を見せるのか。はたまた、本田の“ゼロトップ”をもう一度試行するのか。わずか1枠を巡る熾烈な争いを今後も注視していきたい。
2013/8/15 ロッシ
筆者名:ロッシ
プロフィール:エル・シャーラウィ、ネイマール、柴崎岳と同世代の大学生。鹿島アントラーズ、水戸ホーリーホック、ビジャレアルを応援しています。野球は大のG党。
ツイッター: @antelerossi21