イングランドサッカー協会FAは11日、トッテナム・ホットスパーとそのサポーターに対し、“Yワード”と呼ばれる種類の応援を慎むようにとの声明を発表した。
FAは今回の声明に際し、公衆の面前で叫ぶに相応しくないものだと説明し、今後Yワードの使用については起訴処分も考慮しているという。
・“Yワード”とは?
では、この“Yワード”とは一体何なのだろうか?
“Yワード”とは、“Yiddo”や“Yidy”といったユダヤ人の蔑称のことを言う。ヨーロッパにおけるユダヤ人差別の歴史は根深く、かつてチェルシーのアブラム・グラント監督に対しても、反ユダヤ教信者からの脅迫文が届いていた。
実は、トッテナムのホームスタジアム、ホワイト・ハート・レーン周辺はかつてユダヤ人が多く居住しており、そのことを知った同じロンドンのクラブがトッテナムのことを上記の言葉で罵ったという歴史がある。しかし、トッテナムのサポーターはこれに屈しず、あえてこのチャントを使うことで「だからどうした?」と言わんばかりに、ライバルからの侮蔑を黙らせてきたという過去がある。
それ以来、トッテナムのサポーターはこういったYワードをある意味誇りを持って使用しており、悪意はないということをしきりに主張している。
こちらのチャントをご覧いただきたい。
こちらはトッテナムのジャーメイン・デフォーのチャントである。歌詞には“Jermain Defoe, He's a YIDDO!”とあり、“Yiddo”という言葉が「トッテナムの戦士」といった意味合いで使われていることが分かる。
・FAの声明に対するそれぞれの反応
今回のFAの警告に対し、トッテナムはFAからの警告を真摯に受け止めるとしながらも、サポーターに中傷の意図がないことを主張。真剣に向き合っていくべき問題だと認めた上で、サポーターたちとともに考えていきたいとの声明を発表している。
またトッテナムのサポーターたちも、FAから声明が発表された直後のノリッジ戦、Yワードが使用されたチャントを従来通り口ずさみ、“We'll sing what we want(おれたちはこれからも歌いたいことを歌う)”といった応援が繰り返し流れたという。
今回の件には、イギリスのデイビッド・キャメロン首相もコメントを発表している。『BBC』によると、首相自身はトッテナムサポーターによるYワードの使用は、特定のグループを誹謗中傷したことにはならないだろう、との見解を示したようだ。
首相がコメントに及び、ある種社会的な問題にもなった今回の一連の騒動。はたして今後どう進展していくのだろうか。