現在、ベルギーリーグで首位を走るスタンダール・リエージュ。開幕から6試合連続無失点を記録するなど、リーグ屈指の堅守からベルギーの将来を担う若手アタッカー陣の活躍により、2008-09シーズン以来の5年ぶりの優勝を目指し、第3節から首位をキープしている。12月22日、そんなスタンダール・リエージュと2位アンデルレヒトによる「クラシコ」が行われた。

まずは両チームの陣容を紹介しよう。

クラシコ

「ベルギーの未来を担う若手が主力」

スタンダールのスターティングメンバーは、現時点ではベストメンバーといえる陣容。チーム最年長はキャプテンのDFヴァン・ダンメ、GK川島永嗣の30歳。一方、ベルギーU-21代表に名を連ねるFWバチュアイ、MFエムポク、DFアルスラナギッチがスタメンを張り、昨シーズンのチーム得点王エゼキエルも20歳と、若い選手も目立つ。今季からは、元ベルギー五輪代表監督でスタンダールのテクニカルディレクターを務めるジャン=フランソワ・ドゥ・サールの息子で、19歳のMFジュリアン・ドゥ・サールがトップチームにデビュー。ヴィツェル、フェライニらを輩出したスタンダールアカデミーは、今もなお将来有望な若手を輩出している。

対するアンデルレヒトも若手が中心を担っている。ベルギーU-21代表に選出される若手がスタメンに名を連ね、中でも19歳のMFデニス・プラートは、アンデルレヒトの背番号10に指名された。この試合でのスタメンは、ベルギーU-21代表MFマッシモ・ブルーノ、ホンジュラス代表MFアンディ・ナハルが20歳、DFエムベンバ、セルビア代表FWミトロヴィッチが19歳と、こちらもかなり若いチーム。更に今季からは、16歳のMFユーリ・ティールマンスがトップデビューを飾り、前任者のビリアにも劣らぬほどのパスセンスを発揮している。

「W杯に向けて、復調を遂げるヴァンデンボーレ」

試合の方に移ろう。18分、アンデルレヒトは右サイドバックのアントニー・ヴァンデンボーレがドリブルでボールを運び、スルーパス。これにMFプラートが反応し、スタンダールGK川島永嗣と一対一に。川島を振りきったプラートが右足で流し込み、アンデルレヒトが先制。

2003年には当時16歳でアンデルレヒトのトップチームにデビューし、2004年4月には16歳187日でベルギー代表デビューを果たしたヴァンデンボーレ。ベルギー代表のキャプテンを務めるコンパニと共に、ベルギーの将来を担う逸材として期待されていたが、フィオレンティーナやジェノア、ポーツマスでは成功を収めることができず伸び悩んでいた。2011年には恩師ヴェルカウテレンに誘われゲンクへ移籍し、リーグ優勝に貢献し復調を見せるものの、後任のマリオ・ベーン監督と衝突し2012年6月で契約満了。半年間の浪人生活を経て、今年1月にアンデルレヒトへ復帰した。

復帰当初こそ出番はなかったものの、今シーズンは当時右サイドバックのレギュラーだったギヨーム・ジレの負傷により、第12節にリーグ戦初出場。好パフォーマンスを見せたヴァンデンボーレは、ジレが復帰後は本職の中盤に起用され、ヴァンデンボーレは右SBに定着。持ち味のダイナミックな攻撃参加が戻り、復調をアピールしていたがこのスタンダール戦でのスルーパスでアシストを記録したのだった。

馬力があり、守備でもエムポクやヴァン・ダンメらに負けず、対人守備に強いヴァンデンボーレ。ベルギー代表は現在、両サイドバックが不足し、本職がセンターバックのアルデルヴァイレルトがスタメンを務めている。何度もスランプに陥っているように、精神面の脆さは不安材料だが、フィジカル、スピード共に優れ、攻撃センスも溢れるヴァンデンボーレの復調は、代表チームにとって大きな武器になるに違いない。

「ベルギーリーグ得点王バチュアイの恵まれた才能」

前半はアンデルレヒトが先制するも、スタンダールもセットプレーから決定機を演出し、どちらに試合が傾くのか分からない展開になったクラシコ。しかし、クラシコ独特の殺伐とした空気はお互いには感じられず、ハイペースでミスが許されない、緊張感に包まれた好試合となった。緊張感に包まれた試合展開は、普段は怒号が飛び交う両サポーターも巻き込み、固唾を呑む雰囲気になった。

後半に入っても、お互い決定機を作れない展開は続く。しかし55分、スタンダールのMFヴァンクールがセンターサークル付近でティールマンスからボールを奪い、左へ展開。左サイドでエムポクがタイミングを見計らい中央へパスすると、ミチー・バチュアイがワントラップから振り向き様のシュートを放ち、スタンダールが同点。激しいマークに遭い、序盤から満足に仕事ができなかったバチュアイだが、試合序盤から激しいチェックをしていたクヤテのマークが外れた一瞬を逃さず、左ゴール隅に鋭いシュートを決めてみせた。まさに、バチュアイの集中力の高さが際立つプレーだった。

今シーズンは、開幕からゴールを重ねる20歳の新鋭、ミチー・バチュアイ。フィジカル、スピード、テクニックともに優れ、万能型のフォワードとして活躍している。ベルギーリーグのディフェンダーの激しいチャージにも倒れないフィジカルと、吸い付くような足下の技術を兼ね揃え、距離、角度を問わず、貪欲にゴールを狙い、スーパーゴールを連発している。

またバチュアイは、イモー・エゼキエルと共にベルギーリーグ屈指の2トップを形成している。すでにアーセナルやドルトムントなどからも注目されており、ベルギー代表入りの呼び声も高い。U-21世代の中でも「最もA代表に近い」と言われており、今後の成長次第では、現代表のベンテケやロメル・ルカクらに匹敵する可能性を秘めている。調子のムラを無くし、勝負強さも増したバチュアイは今後が楽しみなアタッカーだろう。

「スタンダール守護神・川島永嗣も好セーブ連発」

55分にスタンダールが追いついたが、試合の流れはどちらにも傾かず、試合は激しく攻守が入れ替わる展開に。両チームとも前線からプレスを掛け、ゆったりとボールを回す余裕すら与えられなかった。両チームとも鋭いカウンターを得意とするため、少しのミスも許されない展開となり、普段は怒号が飛び交う両サポーターも、固唾をのむ試合となった。

67分、右サイドからのヴァンデンボーレの楔のパスを受けた、アンデルレヒトのCFミトロヴィッチが振り向き様にゴール左隅ギリギリを狙ったシュートを放つと、川島永嗣が片手1本でセーブ。更に、74分には再び右サイドからのクロスに、ギヨーム・ジレがシュートを狙うが、これも川島が正面でセーブ。自身がセーブするシーンこそ多くないものの、川島はスタンダール守備陣を統率し、リーグ最少失点にふさわしい活躍でアンデルレヒトに追加点を許さない。

「クリーンだが、緊張感溢れるクラシコ」

100年以上の因縁がある対戦カードに似合わず、終始クリーンなゲームが繰り広げられた今回の「ベルジャン・クラシコ」。ミスが生まれた瞬間に失点するという緊張感により、ベンチ、スタンドも固唾を呑む展開となった。交代カードもきわめて少なく、71分にスタンダールがジュリアン・ドゥ・サールに代えMFオズトゥルクを投入したのみで、アンデルレヒトに関しては1枚も交代カードを使わなかった。

試合は結局1-1のまま終了した。スタンダールのホーム、スクレサンはブーイングが発生したものの、決して殺伐とした雰囲気というわけでもなかった。試合後の選手達の健闘を称える姿こそ、彼らの充実感を表しているに違いない。

現在のベルギー代表はイングランドプレミアリーグをはじめ、ほとんどが国外のクラブでプレーする選手であり、ベルギーリーグでプレーする選手は数少ない。しかし、バチュアイやプラートをはじめとする将来有望なU-21世代、また再起を図るヴァンデンボーレのようなかつての有望株が活躍している。セルビア代表FWミトロヴィッチや元アイスランド代表でクルブ・ブルッヘに所属するFWエイドゥル・グジョンセンなど、外国人選手も豊富だ。「代表がいない」からと言って、決して魅力がないリーグではないと断言しよう。

<編集部より>
試合のハイライトはこちら


著者名:シェフケンゴ

プロフィール:ベルギーサッカーを中心に、様々な観点からサッカーを語るのが大好きなサカオタ。主にベルギー代表、ベルギーリーグについて書いていきたいと思います。愛するクラブは、フランスのAJオセール。

ツイッター: @shevkengo

ブログ: http://ameblo.jp/rcsc/

【厳選Qoly】なぜ?日本代表、2024年に一度も呼ばれなかった5名

ラッシュフォードの私服がやばい