今季契約満了となったJリーガーたちが集う『JPFA(日本プロサッカー選手会)トライアウト』が11日、12日に実施された。12日の部に参加したJ2ヴァンフォーレ甲府を今季で契約満了となったFW松本孝平がトライアウトに初参戦し、パワフルなかつ献身的なプレーをスカウトに見せつけた。
ACLでも自分はできる
186センチの高身長と優れたフィジカルを持つ松本は、守れば積極的に前線からプレッシャーを仕掛け、攻めれば鋭い動きを見せるなどまさに重戦車の如くピッチを駆け抜けた。ミニゲーム前のシュート練習では強烈なパワーシュートをネットに突き刺すなど、圧倒的な存在感を見せた。
ただフルサイズのピッチを用いた25分程度の紅白戦ではゴールを挙げられなかったが、自身の強みである運動量、ポストプレー、どん欲なオフザボールの動きなど労を惜しまないプレーでスカウトにアピールし続けた。「フォワードなので結果を取れれば良かったですけど、惜しいシーンもありましたね。ただきょうはやりたいことができたかな」と振り返った。
これまで山あり谷ありのキャリアを歩んできた。国士舘大時代はリオ五輪前に『日本の最終兵器』と報じられるほどの大型ストライカーとして名を馳せ、大学卒業後は名古屋グランパスに入団。ただプロキャリアでは負傷の影響などもあり、思い描いた活躍を披露できなかった。
名古屋退団後は日本フットボールリーグ(JFL、4部相当)のFCマルヤス岡崎、ティアモ枚方でプレーし、枚方のブレイクにより2022年シーズンはJ3カマタマーレ讃岐へ移籍。リーグ戦31試合9得点と活躍して、翌シーズンに甲府へステップアップ。ただ甲府や今季期限付き移籍していたJ3カターレ富山では実力を発揮し切れなかった。
「数字が事実ですね。甲府で点を取っていないですし、富山でも1点だったので、フォワードとしてはそこがすべてだと思います。そこを評価されてこういう結果になっているのは仕方ないです。ただ甲府でもACL(アジアチャンピオンズリーグ)を経験させてもらいましたし、富山でも昇格を経験させてもらいました。ACLでも自分はできる、通じるところも感じました。
逆にJ2昇格プレーオフが一番物語っていますけど、僕がやるべきことをチームでできることが、あそこで示せたと思って(トライアウトで)出すようにしていましたね。でもそれぞれチームでやっていることや意識していることは違うと思います。
そこで合わせるのも大事ですけど、シンプルに自分ができることを要求する部分はやれたと思います」
欲したゴールは挙げられなかったが、ACLやJ2昇格プレーオフなど大一番や大舞台で得た経験は血肉となっている。何度も逆境から這い上がってきた男から発せられる一言、一言に力が込められていた。