Qolyアンバサダーのコラムニスト、中坊コラムの中坊氏によるコラムをお届けします。
トルガイ・アルスランの大怪我とスキッベ監督の激昂
3月2日(日)のサンフレッチェ広島1-0横浜FC戦において、広島のトルガイ・アルスランと横浜FCの櫻川ソロモンが接触し、負傷交代。その後、治療のためドイツへ一時帰国するほどの大怪我である旨が発表された。
試合後のフラッシュインタビューにおいて、広島のミヒャエル・スキッベ監督は激怒。
まず、「今シーズンの審判のやり方について苦言を申したい」から始まり、今シーズンよりJリーグはAPT(アクチュアルプレーイングタイム)を増やすリーグを目指すことを明言したことから、昨シーズンよりジャッジ基準が変化したことに関連し、「日本のサッカーは間違った方向に進んでいる。今シーズンはプレーイングタイムを伸ばすためにファウルを流して、プレーイングタイムを長くする話があったが、それはうまくいっていない。それによりファウルを流される、ファウルを何回受けても、酷いファウルがあったにもかかわらず、カードも何も出ずに流されている現状がある。非常に残念」と怒りをぶちまけた。
最後にトルガイ・アルスランの状態を問われると、「クソです」と一言吐き捨てて会見を去っている。
この指揮官の怒りと主力中の主力選手の大怪我をもとに、広島サポーターによる審判方針の見直しを要求する署名活動『JリーグとJFAへ審判方針の見直しを要求する』が勃発。
もちろん、トルガイ・アルスランと横浜FCの櫻川ソロモンが接触自体は通常のフットボールコンタクトと呼べる範疇のものであり、ジャッジ基準が直接影響したものではない。
ただ、このJリーグの目指す方向性によって今回のような怪我人が続出することは避けなければならないことであり、また、今後も怪我人が続出するのではないかと危惧されている現状が問題である。
実際にサッカーをやっている時間を長くすることが、試合の魅力に繋がるという狙い、クリーンな激しい体の競り合いで簡単にファウルを取らない取り組みにチャレンジという方向性自体は否定するものではないし、望ましいことだと考える。
だが、実際にここまでのJリーグにおいて簡単にファウルを取られないことを逆手にとり、相手選手のユニフォームを掴んだり、怪我に繋がりかねない激しいプレーが流されてしまっている。
今までであれば適切にファウル判定されていたにもかかわらず、今シーズンからファウルがとられないと(例え事実と乖離している思い込みだったとしても)ファン側が思ってしまいフラストレーションを溜めるような流れになっているのは、望ましいことではない。
ジャッジ基準がもたらす将来像への懸念
今回のトルガイ・アルスランの大怪我は直接的にジャッジ基準の被害者というわけではないのは前述の通りだが、今後もしこの流れが悪い方に作用した場合どうなるか。
Jリーグが目指すクリーンな激しい体の競り合いではなく、相手選手の身体を壊すようなファウルが頻発して大怪我に至る選手が続出したら、この広島サポーターによる署名活動と同様のムーブメントが数多く起こることは想像に難くない。
個人的には、J1を20クラブにしてACLE・ACL2も含め過密日程が激化しているこの流れにおいて、更に選手の消耗へ繋がるアクチュアルプレーイングタイム増加の方針は諸刃の剣になるおそれを危惧している。
実際にサッカーをやっている時間を長くすることが、試合の魅力に繋がっていくことは事実だとは思う、しかし、選手の消耗を防ぎ、万全のコンディションに近い状態でプレーすることも試合の魅力に大きく繋がるし、より優先されるべきと考える。