2025シーズンも早いことで6試合を終了しました。代表ウィークのブレイクがある中、各チームはここまでの自分たちの戦い、そして他のチームの戦いの確認を行うことでしょう。

昨季からの積み上げを実らせたチーム、大型補強を行いチームを擦り合わせているチーム、思った以上に上手くいっていないチーム。それぞれの状況があると思います。

そこで今回は、湘南ベルマーレに注目してここまで6節の戦いに鑑みながら振り返っていきますので、最後までお付き合い頂けると嬉しいです!

「田中聡の穴」を完全解決

まず焦点を当てて話したいのはここです。

圧倒的なパフォーマンスで中盤の底に君臨していた田中聡。彼がサンフレッチェ広島へ移籍をし、そこで披露しているパフォーマンスを見れば、この穴を埋め切るのは難しいと僕は思っていました。

しかしそのような懸念を吹っ飛ばすように、チームでそれを解決しています。昨季からの積み上げが実り、そして奥野耕平のアンカーでの振る舞いが完璧という他ありません。勝手に難しいと思ったことを謝りたいぐらいです。

昨季からボール保持にこだわり、そしてそれが実り始めた後半戦。センターバック(以下CB)の持ち出しでの起点や攻撃参加で前進と崩しを行っていくのですが、その中で奥野のサポートがかなり効いています。

ではどのような効力をもたらしているのでしょうか?

それは中盤の空間に留まりながら、プレッシングプレーヤーを止めることや自分へのパスコースを切らせるために間を閉じさせること、反対にプレスに出るのならばその出口となり、最終ラインの選手を助けています。

これがあるからこそ、CBに時間とスペースが出来て攻撃の起点となれています。

さらに守備の局面でも奥野はものすごいパフォーマンスを披露しています。田中とは違った形でのボールの奪取を行い、立派にフィルターをこなしています。

チームとしてのプレッシングや制限の基盤がしっかりしているので、奥野はスペースの管理を行えています。よく「アンカー周辺のスペースを狙えばいい」と指摘されますが、湘南ベルマーレにおいて、そこはボールの狩場、もしくは誘導されて圧縮されるポイントになっています。

そこにボールが入ると、奥野は狙って回収するか、あるいは狭い方へ向かわせるようなプレッシングをかけていきます。これによってボールを回収し、再び攻撃に出ることが出来ています。

田中のように、圧倒的な奪取能力はないかもしれませんが、より味方と連携しながら、もしくは先手を打って有利な状況を作り出してボールを回収出来ています。

奥野の存在は今季の湘南ベルマーレを1つ上に引き上げたと僕は感じています。個人的にここまで6節を戦った中でのMVPです。

『砲台』藤井智也

快速を飛ばし上下動を行えるイメージの強かった藤井智也ですが、湘南ベルマーレに加入してそのイメージは少し変わりつつあります。

当然ですが、今シーズンもスプリントを繰り返していますが、その質と文脈が今までと全く違うと僕は感じます。

その理由が「砲台」としての地位を確立したことが大きく関係していそうです。スピードがある分、対峙する選手は縦突破を警戒して距離を作り対応を行うことが多いです。山口智監督はきっと、これを利用するように藤井に指導していそうです。

だからその空間を使って、アーリークロスや背後に落とすパス、差し込むパスやスルーパスを供給しています。ここの精度が高いのも藤井を支えていく大きな武器になるはずです。

このプレーを蹴り返せば繰り返すほど、対峙する選手を引っ張り出すことが出来ます。そうするとインサイドハーフ(以下IH)などとのワンツーでサイド奥を取っていくことも可能です。

常に相手に選択肢を突き付け続けることでができるようになったのも、パサーとしての才能を開花させたからだと思います。だからこそ本来のスピードを生かすことができるようになって、より良い選手に成長しています。

積み上げられる組織

昨シーズンから積み上げ続けた保持の局面。これが実り、昨季後半戦からの勢いをそのまま今季にぶつけているのが湘南ベルマーレです。

CBの列上げでの攻撃参加、ウイングバック(以下WB)の起点、IHのリンクと深さと外流れ、センターフォワード(以下CF)のIHタスクと深さの担保、そしてフィニッシュワーク。全てが上手く噛み合っています。

「相手を見て」とういうよりも「自分たちと相手の状況を確認して」というのが正しい表現だと僕は思います。自分たちにも相手にも矢印を向けながら、その影響力を考慮して能動的にプレーを行うことが出来ているので、結果を掴めているのだと思います。

プレッシングのところも全部が全部ハイプレスを行うのではなく、その線引きも上手くなっています。だから最後までエネルギーが枯渇することなく戦い抜くことが出来ているのが今季です。

あとは交代でギアを上げることができるようになると、もっともっと勝ち点を積み上げることはできるでしょう。チームの底上げが更なる高みへ連れて行ってくれるはずです。

注目選手:『戦術兵器』福田翔生

確固たるチームがある湘南ベルマーレで一際異才を放つ選手がいます。それが福田翔生です。彼はベルマーレの戦術兵器となっており、リンクと深さを作りつつ、守備でも中盤管理とプレスの口火役、そして昨季同様にフィニッシャーも務め切っています。

特にオフザボールに磨きがかかり、優位な状態でボールを引き取ることが上手くなった印象を受けます。さらにドリブルのキレも増して、1人でなんとか出来てしまう場面も増え、理不尽さも手にしつつあります。

全てをこなす福田は個人的に今季も注目の選手の1人です。

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今季どこまでこの旋風を巻き起こし続けることができるのか。ブレずにこのまま戦い抜いた先に、まだ見ぬ景色が待っているはずです。

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