クラブの創成期を知る指揮官が就任し、NBA挑戦を目指す日本代表の3ポイントシューター富永啓生、さらにNBAドラフト全体3位指名の実績を持つ大物、ジャリル・オカフォーを獲得。新体制のもとで躍進を遂げている。
60試合制のレギュラーシーズン前半戦を終えて時点で23勝7敗を記録し、東地区3位につけるなど、今やリーグ屈指の“旬なチーム”に注目となった。
10年目のBリーグで変革。富永が語る好調なワケ
レバンガ北海道は、日本バスケボール界のレジェンドシューターである折茂武彦氏が、選手時代の2011年に立ち上げた歴史を持つクラブだ。2016-17シーズンに開幕したBリーグでも、初年度よりB1に参戦してきた。
ただ、これまでの9シーズンで勝率5割を超えたシーズンはなく、最も勝ち星を挙げたシーズンでも26勝(2017-18シーズン)にとどまる。B2降格の危機に直面するシーズンもあった。
しかし、リーグ10年目となる2025-26シーズン、彼らは変革を掲げて臨んでいる。運営体制では、折茂氏が社長を務める一方、2025年6月に株式会社タイミー 代表取締役の小川嶺氏が、新たにオーナーとして経営に参画した。
小川氏は、スキマバイトアプリで知られるタイミーを率いる若手経営者。今回のオーナー就任は、企業としてではなく個人としての取り組みとして発表されたが、大きな注目を集めた。

2025年6月、バスケットボールのB1北海道に加入した富永啓生(左)と写真に納まる新オーナーの小川嶺氏=札幌市(共同通信)
そしてチームの陣容も刷新されている。新指揮官にはトーステン・ロイブル氏を起用。ロイブル氏は、北海道の創設初年度となる2011-12シーズンに初代ヘッドコーチを務めた人物である。
日本での実績も豊富で、バスケットボール男子日本代表のアンダーカテゴリーや、東京オリンピックに出場した男女の3x3日本代表チームでディレクターコーチを務めた経験を持つ。
昨秋のシーズン開幕以降、北海道は60試合制のレギュラーシーズンのうち、折り返しとなる第18節(1月3~4日)を終えた時点で23勝7敗の好成績をマーク。東地区3位につけている。
ロイブルHCは1月4日の川崎ブレイブサンダース戦後、前半戦について冗談を交えながら手応えを語った。
「シーズンが始まる前にレバンガ北海道というチームが30試合を終わって23勝すると言っていた人は、たぶん日本中誰もいなかったと思います。そういうことを言っていたら、病院に連れて行かれたかもしれない(笑)。それほど期待以上の結果を出しているので、総合的には良いと思っています」
爆発力の正体──北海道を変えた新戦力
では、なぜ好調なのか。とりわけ2人の新戦力が北海道の起爆剤となっていることが、大きな要因だろう。
その筆頭が、24歳のシューティングガード・富永啓生(#30/188cm)だ。愛知・桜丘高校時代から世代屈指の3ポイントシューターとして名をはせ、米ネブラスカ大学でも活躍。日本代表としてもプレーし、2024-25シーズンはNBA下部のインディアナ・マッドアンツに所属した。今シーズンから北海道に加入している。
ロイブルHCとはアンダーカテゴリー時代に共闘したほか、東京オリンピック2020では3×3日本代表として世界と戦った間柄だ。富永はBリーグでも前半戦を終えてチームトップの平均18.8得点をマーク。B1の得点ランキングでも日本人選手として最高位につけ、全選手中9番目の成績を残している。
もう一人の起爆剤が、センターのジャリル・オカフォー(#22/211cm)である。名門デューク大学出身で、2015年のNBAドラフトでは1巡目全体3位指名を受けて76ersに入団。NBAオールルーキーファーストチームに選出され、ブルックリン・ネッツ、ニューオーリンズ・ペリカンズなど複数のNBAチームを渡り歩いた。
初のBリーグ挑戦となる今シーズンも、ここまで平均15.4得点、平均8.0リバウンドを記録。インサイドを支配するだけでなく、富永らシューター陣へアシストを供給するプレーも印象的だ。富永とはマッドアンツ時代のチームメイトでもある。

圧倒的な個に目が行きがちだが、富永は好調の要因について「一人ひとりの選手が毎試合ステップアップし、自分の役割を全うできているところが、いま勝てている理由」と語る。富永、オカフォー以外にもチームの戦力は充実している。
昨シーズンからの継続選手では、25歳の島谷怜(#15/175cm)が先発の司令塔を担い、バスケットボールが国技のフィリピン代表でも主力を務めるドワイト・ラモス(#2/193cm)も平均12.7得点を挙げる。控えの関野剛平(#1/183cm)は、自慢の粘り強いディフェンスが健在だ。
新加入選手に目を向けても、アルバルク東京やサンロッカーズ渋谷などBリーグで経験豊富なケビン・ジョーンズ(#5/203cm)が内外角で存在感を発揮。越谷アルファーズから移籍した22歳の市場脩斗(#12/184cm)や、昨シーズンB2で得点とリバウンドの両部門で平均2桁スタッツを残したジョン・ハーラー(#21/205cm)もベンチから流れを変える。
北海道の平均得点はB1で2番目に高い87.4得点。チーム史上最長の12連勝や、試合終盤の逆転勝ちを呼び込む爆発力につながっている。
前半戦ラストの試合で苦戦も、指揮官は「前進していきたい」
それでも、長いレギュラーシーズンは良い試合ばかりではない。第18節では東地区下位に低迷する川崎と対戦。3日のGAME1では、富永がBリーグキャリアハイとなる31得点を叩き出し、77-83で勝利を飾ったものの、4日のGAME2では苦戦を強いられた。
試合の立ち上がりから富永が徹底マークされる中、オカフォーを起点にジョーンズや関野が得点を重ね、1クォーターを17-18と先行。2クォーターに入るとディフェンスが機能し、30-37までリードを広げたが、川崎の反撃を受けて40-42で前半を終えた。
後半に入っても3クォーター序盤は相手ディフェンスを攻めあぐねる展開が続いた。市場らが好守を発揮してリードを奪い返す場面もあったが、2桁点差までは広げられず、55-55の同点で4クォーターへ突入。勝負どころでは川崎の飯田遼(#17/185cm)らに計4本の3ポイントシュートを許した。一方、北海道は富永やラモスらが13本の長距離砲を放つも成功は1本にとどまり、最終的に79-69で敗れた。この試合、富永は6得点に封じられている。
試合後、ロイブルHCは「川崎さんのディフェンスが非常に良くてフィジカルにやられ、自分たちの得点が69点に抑えられたのが大きな敗因。特に数名のシューター陣は全然シュートが入らず、全体的なチームとしてのパフォーマンスも足りてなく負けてしまいました」と総括。富永が抑えられた際の対応と上手くいかなかった点を問われると、チームとして出来が良くなかった点を改めて強調した。

試合後の記者会見に臨む レバンガ北海道 ロイブルヘッドコーチ(取材=Qoly編集部)
「今日の試合に限らず富永選手に対してディフェンスが集中するので、通常だったらそうされたときに、他の選手がステップアップしてチームとして得点を取ることを今までやってきました。ですが、今日の試合はベンチも含めて、誰一人ステップアップできていなかった。唯一、オカフォー選手(18得点)とジョーンズ選手(14得点)が点数を取りましたが、彼らにとってこれは平均点数です。チームとして全体的なパフォーマンスが良くなかったと思いますし、アップセットはどのチームも起こることです。今日の試合にフォーカスするのではなく、ただ今日の試合から学ぶことはたくさんあると思います。課題をクリアしながら、前進していきたいと思っています」
また、富永の試合の振り返りも、指揮官と同様の内容だった。好調の要因が選手それぞれのステップアップにあるからこそ、彼は記者会見で「この2試合ちょっとその辺が欠けてしまった部分があると思います。そこは休み(=バイウィーク)の後、しっかり立て直して、また自分たちらしいバスケットをやっていけたらいいなと思っています」と語った。
初のBリーグ挑戦となる今シーズンについて問われると、次のように振り返る。
「30試合終わって、シーズン最初に比べてちょっと落ち着いてプレーできている印象があります。新しいリーグ、状況で最初は自分がやらなきゃいけないと思うことが多かったものの、試合を重ねるごとに自分のリズムでバスケットができていると思います。間違いなくこれからも、自分に(相手ディフェンスの)プレッシャーがかかってくると思いますが、しっかりとボールを回しながらアシストでもチームに貢献できると思うので、意識してやっていきたいと思っています」

試合後の記者会見に臨む富永啓生(レバンガ北海道) 取材=Qoly編集部
クラブ初のチャンピンオンシップ進出に向けて――。天皇杯とBリーグオールスターによる中断期間・バイウィークを挟み、迎える後半戦もレバンガ北海道の戦いから目が離せない。
他会場の結果
Bリーグ第18節では、次世代を担う若手選手のBリーグデビューが目立った。
東地区では宇都宮ブレックスがアウェーで仙台89ERSと対戦し、1勝1敗としたものの首位をキープ。GAME2では、昨冬の全日本大学バスケットボール選手権大会で奮闘し、宇都宮に特別指定選手として加入した松本秦(早稲田大学1年生)が、初めてBリーグのコートに立った。
同じく東地区の千葉ジェッツは、ホームで富山グラウジーズに2連勝。GAME2では、ユース育成特別枠で加入した17歳の深水虎太郎が初出場を果たし、Bリーグ初得点を記録した。試合後には、チームのSNSを通じて、ロッカールームで渡邊雄太が深水にゲームボールを手渡す様子も紹介されている。
【結果】B1 第18節(2026年1月3日~4日)
1月3日 / 4日
・仙台 92-75 宇都宮 / 仙台 63-93 宇都宮
・川崎 77-83 北海道 / 川崎 79-69 北海道
・琉球 86-65 三河 / 琉球 65-75 三河
・京都 69-83 名古屋D / 京都 60-91 名古屋D
・千葉J 79-72 富山 / 千葉J 88-73 富山
・大阪 86-56 越谷 / 大阪 76-58 越谷
・佐賀 84-78 群馬 / 佐賀 51-81 群馬
・A千葉 65-82 島根 / A千葉 83-78 島根
・A東京 79-87 広島 / A東京 95-72 広島
・三遠 85-70 秋田 / 三遠 85-72 秋田
・長崎 100-85 横浜BC / 長崎 91-78 横浜BC
・SR渋谷 89-78 FE名古屋 / SR渋谷 95-80 FE名古屋
・滋賀 71-90 茨城 / 滋賀 61-88 茨城
【順位表】B1 第18節終了時点(2026年1月4日)
東地区
1位|宇都宮ブレックス|24勝6敗(.800)
2位|千葉ジェッツ|24勝6敗(.800)
3位|レバンガ北海道|23勝7敗(.767)
4位|群馬クレインサンダーズ|19勝11敗(.633)
5位|アルバルク東京|19勝11敗(.633)
6位|仙台89ERS|17勝13敗(.567)
7位|横浜ビー・コルセアーズ|11勝19敗(.367)
8位|サンロッカーズ渋谷|11勝19敗(.367)
9位|越谷アルファーズ|10勝20敗(.333)
10位|茨城ロボッツ|9勝21敗(.300)
11位|アルティーリ千葉|9勝21敗(.300)
12位|川崎ブレイブサンダース|7勝23敗(.233)
13位|秋田ノーザンハピネッツ|5勝25敗(.167)
西地区
1位|長崎ヴェルカ|27勝3敗(.900)
2位|名古屋ダイヤモンドドルフィンズ|23勝7敗(.767)
3位|シーホース三河|20勝10敗(.667)
4位|琉球ゴールデンキングス|18勝12敗(.600)
5位|島根スサノオマジック|17勝13敗(.567)
6位|広島ドラゴンフライズ|17勝13敗(.567)
7位|佐賀バルーナーズ|15勝15敗(.500)
8位|大阪エヴェッサ|13勝17敗(.433)
9位|三遠ネオフェニックス|13勝17敗(.433)
10位|ファイティングイーグルス名古屋|12勝18敗(.400)
11位|滋賀レイクス|11勝19敗(.367)
12位|富山グラウジーズ|9勝21敗(.300)
13位|京都ハンナリーズ|7勝23敗(.233)
文=大橋裕之
