5人制とは同じバスケットボールでありながら、コートの広さや試合時間、求められる判断力やプレーの連続性などに大きな違いがあるのも3x3の特徴。BリーグやWリーグを見ているファンにとっても接点のある競技だからこそ、その違いを知ることで面白さはより伝わってくるはずだ。
4月1日から開幕する「FIBA 3x3 アジアカップ 2026」を前に、5人制との違いや代表の歴史を振り返る(文中の所属は当時)。
1試合10分でKO勝ちあり。5人制バスケとどう違う?
3x3は、5人制と似て非なるバスケットボールだ。コートはハーフコートを使用し、出場は3人、交代は1人のみ。ベンチにコーチは入らず、試合中の戦術判断や交代、タイムアウトのコールなどはすべて選手に委ねられる。
試合時間は1試合10分間。ただし、21点先取でノックアウト勝ちとなる。得点は3ポイントラインの内側が1点、外側が2点。攻撃時間は12秒と短く、5人制(24秒)の半分だ。
攻守が入れ替わる際は、一度ボールをアーク(2ポイントラインの外側)まで出戻す必要がある。ここを素早く処理できると、攻撃の優位性は一気に高まる。
また、ファウルは個人ではなくチームでカウントされ、7個以上でフリースロー2本、10個以上でフリースロー2本+攻撃権が与えられる。21点先取ルールと合わせて、オフェンスが主導権を握りやすい設計だ。
使用球も特徴的だ。重さは7号球と同じだが、サイズは6号球。さらに、3x3専用球はグリップが強く、扱いやすい。こうした要素もあり、ダンクなどのダイナミックなプレーが生まれやすい競技となっている。
5人制がセットプレーやポジションごとの役割分担の中で戦う場面が多いのに対し、3x3はより短い時間の中で、個人の判断力と1対1の強さ、そして攻守の切り替えの速さが勝敗を左右する。同じバスケットボールでも、5人制とは別競技に近いテンポ感がある。
富永啓生は東京オリンピックに出場。小澤崚はFIBA記録を樹立
日本代表の歴史は2013年に始まる。当時は国内リーグも整備されていなかったが「FIBA 3x3 アジア選手権」(現・アジアカップ)出場を機に、3on3経験者を中心にチームが編成された。
国内での競技普及も翌年から本格化する。2014年には、スポーツ量販店・ゼビオ傘下のクロススポーツマーケティング社が運営する3x3プロリーグ「3x3.EXE PREMIER」(3x3 エグゼ プレミア)が開幕。翌2015年には、日本バスケットボール協会が主催する「3x3日本選手権」がスタートした。3x3を主戦場とする選手たちが増え、海外選手も参戦。主要大会で優勝することで世界大会に出場し、より高いレベルを知る機会も増えていった。
ただ、国内での普及がすぐに代表強化へつながったわけではない。2014年の「FIBA 3x3 世界選手権」(現・FIBA 3x3 ワールドカップ)では24チーム中20位、2016年の同大会でも20チーム中11位。2017年のFIBA 3x3 アジアカップでもベスト8止まりに終わった。

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それでも2018年のアジアカップでは、男子が史上初の銅メダルを獲得。落合知也(Team TOKYO)、鈴木慶太(Team TOKYO/RBC 東京)、小松昌弘(同)、野呂竜比人(同)の4人が継続的に国内外の3x3大会へ参戦し、チーム力を高めてつかんだ、今なお唯一のメダルだ。
2019年には東京オリンピックに向けた強化がさらに進む。トーステン・ロイブルHCの下、3x3プレーヤーだけでなく、Bリーガーや大学生も招集し合同合宿を実施。
Bリーガー主体で臨んだ同年のアジアカップ、さらに落合知也 (越谷アルファーズ/TOKYO DIME.EXE)、小松昌弘(TOKYO DIME.EXE)、小林大祐 (ライジングゼファー福岡/UTSUNOMIYA BREX.EXE)、保岡龍斗 (秋田ノーザンハピネッツ/SEKAIE.EXE)で挑んだワールドカップでは苦戦を強いられた。
それでも2021年のオリンピック本大会では落合、保岡、富永啓生(ネブラスカ大学)、アイラ・ブラウン(大阪エヴェッサ)の4人で出場し、8チーム中6位と健闘。コロナ禍で無観客開催という特殊な状況ながら、テレビを通じて競技の認知拡大に大きく貢献した。

一方で、東京オリンピックから2024年のパリオリンピックまでの3年間は苦戦が続く。代表として3x3の積み上げが十分にできず、五輪の出場権を逃した。
佐土原遼(広島ドラゴンフライズ)やトーマス・ケネディ(茨城ロボッツ)らがBリーグのオフに代表活動に参加し、2023年のワールドカップでは初の予選突破(ベスト12)を果たしたものの、2度の五輪予選はいずれも突破できず。シーズンを通して3x3に取り組む強豪国との差は大きかった。
5人制とは異なるテンポや判断力に加え、狭いスペースで当たり続けるフィジカルへの適応も、継続強化の面で課題となっていたと思われる。
それでも、厳しい3年間の積み重ねがひとつの形になったのが2025年だ。
小澤崚(ALPHAS)がアジアカップでFIBA新記録となる1試合20得点を記録し、チームをけん引。仲西佑起(UTSUNOMIYABREX)、出羽崚一(SHINAGAWACC WILDCATS)、井後健矢(SAGAMIHARA PROCESS)とともに、7年ぶりの4強入りを果たした。
3x3プレーヤーたちが結果を残し、同年のワールドカップでもトップ12入り。日本代表は再び上昇の兆しを見せている。3x3ならではの積み上げが、ようやく結果に結びつき始めた。
東京オリンピックには自力で出場。2025年にはアジアカップで銀の女子代表

では、女子代表はどんな歴史を歩んできたのか。初めての代表チーム結成は2016年。当時大学生だった4人がFIBA 3x3 世界選手権に派遣され、20チーム19位に終わる苦い船出となった。
それでも翌年にはWリーグ経験者が加わり、強化が進む。東京オリンピック出場を目指して3人制に転向した矢野良子ら(トヨタ自動車アンテロープス)がワールドカップに出場した。
2018年には前田有香らがアジアカップでベスト4に入り。続く2019年には、男子と同様に東京オリンピックへ向けた強化が本格化した。
前田や桂葵(湘南SUNS)といった3x3プレーヤーに加え、Wリーグ選手も参加した合同合宿を実施。伊集南(デンソーアイリス)、篠崎澪(富士通レッドウェーブ)、西岡里紗(三菱電機コアラーズ)、宮下希保(アイシン・エィ・ダブリュ ウィングス)の4人で臨んだアジアカップでは、A代表初の銅メダルを獲得した。

そして、男子と対照的に開催国枠がなかった女子は、2021年、コロナ禍のなかで行われたオーストリアでの五輪予選を突破。
篠崎、西岡、馬瓜ステファニー、山本麻衣(ともにトヨタ自動車アンテロープス)の4人を中心に、永田萌絵(トヨタ自動車アンテロープス)や田中真美子(富士通レッドウェーブ)もサポートメンバーとしてチームを支え、自力で出場権をつかみ取った。
本大会では3位決定戦に敗れて惜しくもメダルには届かなかったが、予選で強豪アメリカを破るなど、世界に大きなインパクトを残した。
しかし、東京オリンピック以降は男子と同様に苦しい時期が続く。5人制を主戦場とする選手でチームを編成する中で、3x3に最適化された戦い方を積み上げることができなかった。
2023年のアジアカップはベスト8。同年のワールドカップでは江村優有(早稲田大学)を軸に強豪ドイツを破るなどベスト12入りを果たしたものの、翌年に臨んだ2度の五輪予選では、その江村が初戦で負傷。宮下希保 (トヨタ自動車アンテロープス)、高田静(ENEOSサンフラワーズ)、中田珠未(同)、高橋未来(デンソー アイリス)の4人で最終予選まで戦ったが、エース不在のなかで五輪の舞台には届かなかった。
それでも2025年、強化方針の見直しが実を結ぶ。
3x3を主戦場とする選手たちと、Wリーグでも3x3にコミットできる選手たち組み合わせたチームで結果が出始めた。
アジアカップでは伊集南コーチの下、2019年を上回る銀メダルを獲得。髙橋芙由子(FLOWLISH GUNMA)、鶴見彩(MAURICELACROIX)、野口佑季(boldiiies)、西ファトゥマ七南(早稲田大学)が躍動した。

前田有香氏がヘッドコーチに就任したワールドカップでも、髙橋(芙)、桂葵(トヨタ紡織 サンシャインラビッツ/ZOOS)、宮下希保(富士通レッドウェーブ)、高橋未来(アイシン
ウィングス)がベスト12入り。予選では優勝国オランダを破るなど、確かな手応えを示した。
さらに、桂、宮下、高橋(未)に鶴見を加えて出場した女子世界No.1を決めるツアー戦では、インドネシア大会でA代表初の優勝も達成。女子代表は再び上昇気流に乗り始めている。
ロス五輪に向けた大事な一戦。アジアカップ2026開幕へ
現在、日本代表はロサンゼルス五輪を見据えた強化段階にある。本大会の出場国は、開催国枠・アメリカを除く11チーム。出場権は2027年12月1日時点のFIBAランキング上位5チームに加え、4度の五輪予選を通じて計6チームに与えられる。
その中で、4月1日からシンガポールで開催される「FIBA 3x3 アジアカップ」は五輪へ向けた重要な大会となる。
3日に初戦を迎える女子代表は、3x3専属選手、Wリーグ所属選手、大学生による合宿を経てメンバーを選出。昨年に続き鶴見彩(MAURICE LACROIX/165cm)、高橋未来(アイシン ウィングス/169cm)が名を連ねたほか、野口さくら(同/182cm)、花島百香(ENEOSサンフラワーズ/178cm)が初のA代表入りを果たし、悲願の金メダル獲得を目指す。
一方、4日に初戦を迎える男子代表も狙うは頂点だ。
2月にはロサンゼルス五輪を見据え、3x3専属選手、アンダーカテゴリー(U23/大学生)、Bリーガーという「三本の矢」での強化方針を表明。Bリーガーはオフシーズンに、トーマス・ケネディや長谷川比源(滋賀レイクス)らがロスター入りするJBA 3×3 スペシャライズドチーム「Team TOKYO 2026」で国際大会に臨む予定だ。5人制で培ったサイズや強度を3x3の国際舞台へどう接続していくかを探る試みでもあり、Bリーガーがオフに3x3の実戦経験を積む場としても重要な位置づけとなりそうだ。
今回のアジアカップに向けては、3x3専属選手とアンダーカテゴリーによる合宿を実施。

その結果、昨年の悔しさを知る小澤崚(SHINAGAWA CITY.EXE/178cm)、仲西佑起(UTSUNOMIYA BREX.EXE/191cm)、井後健矢(SAGAMIHARA PROCESS/198cm)がメンバー入りし、新戦力としてクーリバリ ソロモン(UTSUNOMIYA BREX.EXE/183cm )が加わった。エース・小澤の「今年は絶対に優勝できるように準備していきたい」という言葉も頼もしい。

FIBAランキングでは男子が14位、女子が12位。ともにアジア3番目につけており、メダル獲得への期待は大きい。
BリーグやWリーグが盛り上がる中、10分一本勝負のスリリングな攻防が魅力であり、5人制とは異なる形でのスピード感やフィジカル、そして判断力が問われる3x3。アジアNo.1を目指す日本代表の戦いに注目したい。
文=大橋裕之、 写真=大橋裕之・FIBA.com

