文男のために勝とう──。
B1優勝経験を持つ千葉ジェッツと、今シーズンからB1に昇格したアルティーリ千葉による“千葉ダービー”は、新しいBリーグの景色をつくり出した。レギュラーシーズン最終節で実現した一戦。LaLa arena TOKYO-BAYには両日ともに1万人を超える観客が詰めかけ、大いに盛り上がった。
千葉Jにとってはチャンピオンシップのホーム開催権が懸かる重要な2連戦で、今季限りで現役引退を表明している西村文男のためにも負けられない戦いだった。
一方のA千葉でも、今季限りで第一線を退く大塚裕土が存在感を発揮。千葉を舞台に生まれた印象深いダービーを振り返る。

ダービーで並び立った“クラブの顔”

Bリーグ2020-21シーズンに初優勝を果たした千葉ジェッツは、リーグ屈指の人気クラブだ。

2010年に創設され、「千葉県をバスケットボール王国にする」というビジョンを掲げながら成長。2024年にはホームアリーナを船橋アリーナからLaLa arena TOKYO-BAYへ移し、船橋市を拠点に
創設15周年を迎えた。

対するアルティーリ千葉は、2020年に千葉市を拠点として誕生。2021-22シーズンにB3へ参入すると、初年度でリーグ2位でB2昇格を果たした。その後は2季連続でB2プレーオフ敗退を経験しながらも、2024-25シーズンについに悲願のB1昇格を決めている。

そんな千葉Jと、A千葉が戦う“千葉ダービー”は、今シーズンから新たに誕生したカードだ。3月28日、29日にはA千葉のホーム・千葉ポートアリーナで初開催され、千葉JがGAME1を制した一方、GAME2ではA千葉が劇的勝利を収めた。

そして迎えた5月2日、3日のレギュラーシーズン最終節。第2ラウンドの舞台は、千葉Jの本拠地・LaLa arena TOKYO-BAYへ移った。

画像1: ダービーで並び立った“クラブの顔”

くしくも両チームには、今季限りで現役引退を表明した“クラブの顔”がいた。千葉Jの西村文男(#11/177cm/PG)と、A千葉の大塚裕土(#24/188cm/SG)だ。

画像2: ダービーで並び立った“クラブの顔”

ともに東海大学出身で、西村が1学年上。西村は2014年加入で在籍12年目を迎え、大塚はクラブ創設時からチームを支えてきた存在。それぞれがクラブの歴史を築いてきた選手として、チームメイトやファンから愛されている。

千葉ジェッツ指揮官が見せた“粋な采配”

そんなストーリーを背負って迎えたダービーGAME1。主導権を握ったのは千葉Jだった。

最終節で2連勝すれば、自力でチャンピオンシップ(CS)クォーターファイナルのホーム開催権をつかめる大事な一戦。チームは“文男のために勝とう”を合言葉に、立ち上がりから勢いに乗った。

1クォーターでは渡邊雄太(#1/206cm/SF・PF)らが次々と3ポイントシュートを成功。チームで10本中8本を射抜くなど35-20と先制パンチを浴びせる。

2クォーターに入っても勢いは止まらず。原修太(#31/187cm/SG・SF)がドライブで流れをつくれば、ルーキーの瀬川琉久(#5/185㎝/PG)も好守で存在感を発揮。千葉Jは59-35と24点をリードして前半を終えた。

画像1: 千葉ジェッツ指揮官が見せた“粋な采配”

しかし、A千葉も負けてはいなかった。

3クォーターに入ると、大塚が3本の3ポイントシュートを沈めて反撃。ディフェンス面でも修正し、前半だけで10本許した相手の長距離砲を無得点に封じ込める。

79-54で迎えた4クォーターには、大塚がさらに4本の3ポイントを成功。後半だけで7本を決める圧巻のパフォーマンスに、アリーナは大きなどよめきに包まれた。

画像2: 千葉ジェッツ指揮官が見せた“粋な采配”

さらに大崎裕太(#16/177cm/PG・SG)も出場10分間で8得点をマークし、司令塔の黒川虎徹(#3/175cm/PG)も4アシストでゲームをコントロール。A千葉は29-17と意地の反撃を見せた。

それでも大量リードを活かした千葉Jが98-81で勝利。試合終盤には、トレヴァー・グリーソンHCが、引退を表明している西村を渡邊、原、富樫(#2/167cm/PG)、荒尾岳(#25/198cm/PF)らベテラン陣とともにコートへ立たせる“粋な采配”を見せた。

画像3: 千葉ジェッツ指揮官が見せた“粋な采配”

「裕土さんのおかげで、今の僕がある」(A千葉・黒川)

試合後の会見では、今季限りで引退を表明している2人がマイクを握った。

まず、大塚はこの日チーム最多の21得点を記録。7本成功した3ポイントシュートは、自身のキャリアハイを更新する数字となった。引退を控えるベテランとは思えないようなパフォーマンスだった。

画像1: 「裕土さんのおかげで、今の僕がある」(A千葉・黒川)

それでも、大塚の視線はあくまでチームに向いていた。「シュートが入ったところは良かったなと思います」と、そう振り返りつつも、個人記録を強調することはない。

「チームメイトが打たせてくれるように動いてくれたのが要因だと思います。(それよりも)出だしで2個ファウルをしたり、原選手や渡邊選手へ簡単にドライブのレーンを開けてしまったりしたので、改善していかないといけない」

最後までチームファーストでプレーしようとする姿勢は、若い選手たちにもいい影響を与えている。

日本代表候補にも名を連ねる25歳の黒川は、「率直に、まだ引退しなくてもいいんじゃないかなと思います」と話したうえで、「裕土さんがいるから、僕はアルティーリ千葉というチームに行きました」と明かした。

さらに、「裕土さんのおかげで、今の僕があると思います。最後まで今日も背中で見せてくれましたし、それを今後のアルティーリで僕が引き継いでいけたらいいなと思います」とコメント。

クラブを支えてきた背番号24から、新たなフランチャイズプレーヤーへ。A千葉バトンは確かに受け継がれようとしていた。

画像2: 「裕土さんのおかげで、今の僕がある」(A千葉・黒川)

CSで「強さを出すタイミングがある」(千葉J・西村)

一方、西村も最後まで“チームのため”に戦い続ける覚悟を示した。

画像1: CSで「強さを出すタイミングがある」(千葉J・西村)

引退へのカウントダウンが進むなかでも、「自分のためにバスケットをするのは、6月3日の引退試合と決めている」と語り、「CSが終わるまで第一優先はチームです。いつもと変わらないように立ち振る舞っていきたい」とコメントした。

今シーズンは出場機会が減少。「(勝利に対する)貢献度がどうしても低い」と感じているが、それでも自分にできる役割を全うし、チームを支え続けるつもりだ。

「みんなへの声掛けですかね。(今シーズンは)多くするようになりました。面倒くさがられない程度にかな。本当にできることは限られていると思うので、最後はそこをやりきりたいなと思っています。今日も一回“ハドル!”と言った時に集まらなかったので、“ハドル組め!”と叫んだりもしました。そういうところかなと思っています」

ただ、本人が「貢献度がどうしても低い」と感じながらも、今節のチームは“文男のために勝とう”とひとつになって戦った。それだけ、西村はチームにとって欠かせない存在なのだ。

クラブは最終節前日、SNSを通じて西村を称えるチームの様子を発信。グリーソンHCにその背景を尋ねると、「(前節が終わった)週明けにベテラン選手を呼び集めて、何かの形で西村選手のこれまでの成績、貢献をどうにか称えたいという話をした中で、あのような機会を作ることができました」と振り返った。

GAME1終盤、ベテラン陣とともに西村をコートへ送り出した“粋な起用”にも、指揮官としてのリスペクトが込められていた。

「(2009年に西村のキャリアが始まった頃)ユースの選手(深水虎太郎)で言えばまだ1歳、瀬川選手が3歳、金近選手が6歳でした。(若い選手は)知らなかった時代かもしれませんが、プロを続けられること、彼がチームメイトであることへの感謝(を示したい)。彼は常にチームファーストを示し続けて、素晴らしいと思います。今日に関して言うと、最後の5人ですね。欲を言えばもう少し出したかったのですが、ラストに出すことができて良かったと思います」

画像2: CSで「強さを出すタイミングがある」(千葉J・西村)

そんなジェッツは、GAME2も96-87で制して2連勝。「りそなグループ B.LEAGUE QUARTERFINALS 2025-26」のホーム開催権を獲得した。5月9日からホームで迎える大一番では、ワイルドカード1位の群馬クレインサンダーズを迎え撃つ。

今シーズンの千葉Jは、開幕10連勝の好スタートから一転、連敗や大黒柱であるジョン・ムーニーの戦線離脱など、苦しい時期も経験した。在籍12年目の西村も「本当に波の激しい山あり谷ありみたいなシーズン」と振り返り、「今までと比べてもトップクラスに苦労した年」と語るほどだった。

ただ、その苦しい経験こそがチャンピオンシップで生きると感じている。

「逆に試合中もそうですが、そういう(苦しい)状況になったとき、うちはよりその経験があるからこそ、より結束して強く戦えるんじゃないかと期待もあります。そういう意味で、正直シーズン通してチームを作るところでは上手くいかなかったことも多かったのですが、苦労したからこそ、より強さを出すタイミングがあるんじゃないかと思っています。ちょっとワクワクしています」

文男の言葉を胸にーー。
千葉Jは2度目のリーグ制覇へ挑む。

画像3: CSで「強さを出すタイミングがある」(千葉J・西村)

他会場の結果。三河が地区2位を確保。CSの組み合わせは?

B1 第36節を持って、レギュラーシーズン全日程が終了した。すでに地区優勝を決めていた宇都宮ブレックス、長崎ヴェルカに加え、残る6チームの順位も確定。5月7日からスタートするチャンピオンシップ・クォーターファイナルの組み合わせも決まった。
西地区を初制覇し、全体勝率1位の長崎は、最終節を1勝1敗で終えてワイルドカード4位となったアルバルク東京と対戦。東地区王者の宇都宮は、4連敗でレギュラーシーズンを終えたワイルドカード3位の名古屋ダイヤモンドドルフィンズを迎え撃つ。
また、千葉Jは群馬とのマッチアップへ。シーホース三河は最終節を1勝1敗で終え、西地区2位を確保し、ワイルドカード2位の琉球ゴールデンキングスとの対戦が決まった。
B.LEAGUE10年目のシーズン。その頂点に立つクラブはどこになるのか。熱狂のチャンピオンシップが、いよいよ幕を開ける。

【結果】B1 第36節(2026年5月2日 / 5月3日)

・千葉J 98-81 A千葉 / 千葉J 96-87 A千葉
・横浜BC 71-74 川崎 / 横浜BC 84-88 川崎
・北海道 104-111 A東京 / 北海道 97-96 A東京
・群馬 83-82 仙台 / 群馬 87-86 仙台
・長崎 105-94 京都 / 長崎 63-84 京都
・広島 89-96 富山 / 広島 91-101 富山
・三遠 89-66 名古屋D / 三遠 93-79 名古屋D
・島根 91-85 FE名古屋 / 島根 68-90 FE名古屋
・秋田 72-85 佐賀 / 秋田 70-87 佐賀
・滋賀 88-81 SR渋谷 / 滋賀 65-73 SR渋谷
・茨城 87-81 大阪 / 茨城 91-79 大阪
・宇都宮 83-82 琉球 / 宇都宮 70-92 琉球
・三河 83-75 越谷 / 三河 75-98 越谷

【順位表】B1 第36節終了時点(2026年5月3日)

・CS進出ラインあり。出場 ホーム開催決定:★ / 出場確定:☆
東地区
★1位|宇都宮ブレックス|45勝15敗(.750)
★2位|千葉ジェッツ|42勝18敗(.700)
-------------------------------------------CS進出ライン(地区2位以上)
☆3位|群馬クレインサンダーズ|42勝18敗(.700)WC1位
☆4位|アルバルク東京|41勝19敗(.683)WC4位
-------------------------------------------CS進出ライン(WCによる進出)
5位|レバンガ北海道|37勝23敗(.617)
6位|仙台89ERS|35勝25敗(.583)
7位|横浜ビー・コルセアーズ|26勝34敗(.433)
8位|サンロッカーズ渋谷|25勝35敗(.417)
9位|越谷アルファーズ|21勝39敗(.350)
10位|茨城ロボッツ|19勝41敗(.317)
11位|アルティーリ千葉|19勝41敗(.317)
12位|川崎ブレイブサンダース|16勝44敗(.267)
13位|秋田ノーザンハピネッツ|10勝50敗(.167)

西地区
★1位|長崎ヴェルカ|47勝13敗(.783)
★2位|シーホース三河|43勝17敗(.717)
-------------------------------------------CS進出ライン(地区2位以上)
☆3位|琉球ゴールデンキングス|42勝18敗(.700)WC2位
☆4位|名古屋ダイヤモンドドルフィンズ|41勝19敗(.683)WC3位
-------------------------------------------CS進出ライン(WCによる進出)
5位|三遠ネオフェニックス|36勝24敗(.600)
6位|佐賀バルーナーズ|32勝28敗(.533)
7位|広島ドラゴンフライズ|31勝29敗(.517)
8位|島根スサノオマジック|28勝32敗(.467)
9位|大阪エヴェッサ|23勝37敗(.383)
10位|滋賀レイクス|23勝37敗(.383)
11位|京都ハンナリーズ|20勝40敗(.333)
12位|富山グラウジーズ|18勝42敗(.300)
13位|ファイティングイーグルス名古屋|18勝42敗(.300)

文=大橋裕之

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