バスケ日本代表ガード・山本麻衣が、WNBAラスベガス・エーシズと契約を結んだ。昨年からアメリカでのトレーニングやWNBAキャンプ参加を重ね、今年4月、日本代表として臨んだはエーシズとのプレシーズンゲームで3ポイントシュート7本を含む24得点を挙げた活躍が評価された。幼少期から全国制覇を経験し、桜花学園、トヨタ自動車、日本代表で数々の実績を積み、3人制では世界大会優勝とMVPも獲得。挫折や悔しさを糧に努力を続け、負けん気と高い技術を武器に成長してきた山本は、日本人5人目のWNBA公式戦出場へ期待が高まっている。

世界最高峰が認めた実力 山本麻衣、夢のWNBA契約

日本時間7月18日、WNBAのラスベガス・エーシズは山本麻衣との契約を発表した。突然届いた吉報に、山本自身は9月の「FIBA女子バスケットボールワールドカップ2026」に向けて日本代表活動中ではあったが、急遽、アメリカへ飛ぶこととなった。

163cmのポイントガードは、かねてからWNBAでのプレーを熱望してきた。英語の勉強にも励み、昨年はWNBAのダラス・ウイングスのトレーニングキャンプに参加。最終のロスター入りは逃したものの、その後も夏の間はアメリカでトレーニングを重ねた。

今年はWリーグで準優勝し、シーズンを4月12日に終えると、それから1週間も経たずして始まった女子日本代表のアメリカ遠征(トレーニングキャンプ)に参加。その期間に女子日本代表はWNBAチームのエーシズとフェニックス・マーキュリーとのプレシーズンゲームを行ったのだが、山本はエーシズ戦で3ポイントシュート7本を含む24得点を奪う活躍を見せた。今回は、このときのプレーを見込まれての契約といえるだろう。

画像: Photo by Ethan Miller/Getty Images
Photo by Ethan Miller/Getty Images

山本は、アメリカ遠征を終えて日本で休暇を取ったが、「アメリカに行くと自分の成長の幅を引き出してくれる感覚があって、それが自分の中ではすごく心地いいです」と、昨年も訪れたアリゾナの施設を、ワークアウトなどを目的に再び渡米している。

また、2025-26シーズンをもって8シーズン所属したトヨタ自動車を退団。今年は、秋にスタートするグローバルなバスケットボール・トーナメントサーキットである『プロジェクトB※』への参戦を表明している。それもこれもすべて、WNBAでのプレーを視野に入れてのことだ。

※プロジェクトBとは、世界のトップクラスの選手(男女)がアジア、ヨーロッパ、南北アメリカ大陸の主要都市を転戦して行う国際トーナメントサーキット

エリート街道を歩んできたガード。負けん気の強さは昔から

ここで少し山本の歩みを見ていこう。1999年生まれの山本は、父の健之さんが元バレーボール日本代表、母の貴美子さんは元三菱電機の選手(バスケットボールの日本リーグ/現在のWリーグでプレー)というスポーツ一家で育った。

バスケットを始めたのは小学1年生で、2学年上で同じくバスケットをしていた姉・加奈子さんが愛知の強豪中学校へ進むのを機に、家族で広島から母の地元である愛知へと移り、山本も小学校5年生から愛知の名門チーム・昭和クラブに加入した。基礎基本に重きを置くチームで、山本は才能をより開花させていく。6年生のときにはエースとして全国優勝を達成。姉のいる津島市立藤浪中学校に入学すると、2年生のときには全国中学校大会制覇に一役買った。スピードあふれるプレーと卓越したスキル、また勝負強いシュート力はこの頃から健在で、翌年の全国大会では準優勝に終わったが、中学時代に残したインパクトは、世代のトップ級の選手であることを印象付けるのに十分だった。

そして高校は愛知県の桜花学園高校へ。高校バスケット界切っての伝統校には名将の故・井上眞一氏がおり、山本も井上氏から多くのことを学んだ。トップチームの中で技術はもとより、勝つメンタリティも培っていくと、1年生の頃からスターターとして日本一に貢献。高校2年生のときには1学年上の馬瓜ステファニーらとともにインターハイ、国民体育大会、ウインターカップの3大タイトルを制し、いわゆる“3冠”獲得を達成した。

こうして常にトップを走り続けてきた山本は、高校卒業後トヨタ自動車アンテロープスに入団。チームがWリーグ連覇を果たした2020-21、2021-22シーズンには主力として躍動し、2021-22シーズンにはプレーオフMVPにも輝いた。

日本初の世界大会優勝に貢献、MVP獲得…3人制でも5人制でも国際大会で実力を示してきたガード

日本代表では高校時代にU17、18日本代表として国際大会に出場したが、世界に「マイ・ヤマモト」の名が知れ渡ったのは3x3(3人制バスケットボール)のカテゴリーだろう。

3x3が正式種目となった「東京オリンピック2020」に向けて強化を図る中、山本は日本の中心メンバーとして経験を重ねていき、2019年には3x3女子U23日本代表として「FIBA3×3 U23 WORLD CUP 2019」(中国開催)にて金メダルを獲得する。これは男女全カテゴリー(5人制/3人制を問わず)の中で、日本史上初の世界大会優勝という偉業で、同大会で山本はMVPにも輝いている。そして2021年には東京オリンピック予選を勝ち抜き、自身初となるオリンピック出場を果たした。

画像: 日本代表 バスケ3人制女子1次L  イタリアに勝利し決勝トーナメント進出を決め喜ぶ(左から)篠崎(11)、西岡、馬瓜ス、山本=青海アーバンスポーツパーク 2021年07月
日本代表 バスケ3人制女子1次L  イタリアに勝利し決勝トーナメント進出を決め喜ぶ(左から)篠崎(11)、西岡、馬瓜ス、山本=青海アーバンスポーツパーク 2021年07月

東京オリンピック以降は本格的に主戦場が5人制へと移り、女子アジアカップ(2021、23年)や女子ワールドカップ(2022年)では主力の一人として奮起。中でも2024年2月にハンガリーで行われた「FIBAオリンピック世界最終予選2024(OQT)」では大会MVPを受賞する働きで、パリ・オリンピック出場権獲得の原動力となった。なお、同年夏のパリ・オリンピックには初めて5人制の日本代表としてコートに足を踏み入れている。

今年に入っても3月にトルコで開催された「FIBA女子ワールドカップ2026 予選トーナメント」において5試合すべてで2桁得点で大会ベスト5に選出されるなど、ここまでの結果や貢献度は目覚ましいものがある。

だが一方で、エリート街道を歩んできたように思える山本だが、中学3年生のときには全国大会の決勝で敗退。高校3年生のときにはインターハイ、国民スポーツ大会、ウインターカップといずれの大会でも頂点には届いておらず、中高と最終学年のときには負けを味わってきた。トヨタ自動車時代も入団から1、2年目は試合に出られないという悔しい思いも経験してきた。

そんなとき山本は、抱いている感情を隠すことはなかった。メディアの前では静かに、そしてしっかりと自身の現状と心境を言葉にした。時に悔しさからか自然と口数が少なくなったのは“負けず嫌い”がゆえだろう。

そうした悔しさを糧にバスケット選手の中では決して身長は高くはないが、努力と持ち前の負けん気で壁を一つひとつクリアしてきた。シュート力やスキルはもとより、大型選手との接触にもものともしない様子は、積み重ねてきたトレーニングの成果といえるだろう。

普段は笑顔の絶えない26歳。だが、コート外での和かな表情とは裏腹に一度コートに立てば強気のプレーを見せる。そんなギャップも彼女の魅力の一つだ。

桜花学園の恩師である井上氏は、教え子に対して昔から「世界で通用する選手を育てる」ことを目的に掲げてきた。

WNBAの公式戦に出場すれば、萩原美樹子(東京羽田ヴィッキーズヘッドコーチ)、大神雄子(トヨタ自動車アンテロープスヘッドコーチ)、渡嘉敷来夢(トヨタ自動車)、町田瑠唯(富士通レッドウェーブ)に続く、日本人史上5人目のWNBAプレーヤーとなる。このうち、大神、渡嘉敷は桜花学園の卒業生だ。

偉大なる先輩たちに続くか。コートネームの「リム」はドリーム(Dream)のリム。アメリカでの続報はまだないが、“夢”の実現はすぐそこまで来ている。

【取材・文=田島早苗】
『月刊バスケットボール』(雑誌)『バスケットボールキング』(WEB)の編集部を経てフリーランスに。中学や高校、大学などの学生をはじめ、WリーグやBリーグ、男女日本代表と様々なカテゴリーを幅広く取材している。

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