「FIBA 3×3ウィメンズシリーズ」熱戦で歓喜に沸く代々木…三菱電機が準優勝
8月1日から2日間、女子国際ツアー大会『FIBA3x3 ウィメンズシリーズ 東京ストップ 2026』が国立代々木競技場 第二体育館で開催された。日本での開催は7年ぶり。今ツアーは、世界各地を転戦して頂点を争う女子3x3最高峰の舞台であり、ロサンゼルス五輪に向けたポイント獲得においても重要な意味を持つ。五輪予選を経ず、世界ランキングによる出場権獲得を目指す日本女子にとって、ランキングポイントの獲得は至上命令だった。
FIBA3x3 東京ストップには日本から3チームが出場。「3x3女子日本代表」をはじめ、今季初参入のコマーシャルチームとして挑む「三菱電機」、3x3日本選手権優勝チームの「FLOWLISH GUNMA」(高崎)が参戦した。国を背負う各国の代表チームと一般の強豪チームが同じ大会で戦うのはFIBA 3x3ならでは。さらに、アゼルバイジャンの強豪チーム「Neftchi SOCAR」に所属する日本人選手で先日まで「3x3女子日本代表」だった桂葵も出場し、会場は大きな熱気に包まれた。

今シーズンは、アゼルバイジャンの強豪「Neftchi SOCAR」に所属する桂葵
DAY2の決勝トーナメントで、「三菱電機」は準決勝で中国の強豪クラブ「北京」を21-19で破り、チーム初の決勝進出を決めた。決勝では「オランダ代表」に16-21で敗れたものの、3x3キャリアわずか4カ月の選手たちが2025年W杯女王と互角に渡り合う姿は、会場のボルテージを最高潮に引き上げた。

女子バスケットボールでは初!5人制と3人制を行き来する髙橋芙由子
「三菱電機」の原動力となったのが髙橋芙由子(#5)だ。身長163㎝と小柄ながら、鋭いドライブと2ポイントシュートを武器にコートを走り回る。試合前の入場から勢いよく駆け出し、仲間の好プレーには人一倍喜ぶなど、チームに絶大なエナジーを与えている。
チームメイトであり後輩の山本雪鈴(#11)は先輩の良さを「一番ハードにやっているし31歳ですけど、自称24歳みたいな感覚でいつも筆頭になってくれています(笑)。自分たちも若いなりに(その勢いに)乗っかろうという気持ちで、全員で楽しくやっています」と信頼を寄せる。

名門・桜花学園高校の出身で、高校時代には馬瓜エヴリンらと日本一に。進学先の白鷗大学でも、現5人制女子日本代表の林咲希とプレーし、大学日本No.1になった。卒業後に秋田銀行で全国制覇を経験した後、3x3へ本格的に転向。2023年に加入した「FLOWLISH GUNMA」で頭角を現すと、レッドブルが主催する3x3のグローバルトーナメント『Red Bull HalfCourt』で世界2位に。2024年には3x3のグローバルリーグ『3x3 PREMIER 2024 PLAYOFFS』で準優勝。2025年には『FIBA3x3 アジアカップ2025』で日本代表に初選出され、大会ベストチーム(Team of the Tournament)への選出と、39得点で大会得点王にも輝き、日本女子として同大会過去最高成績となる銀メダル獲得に貢献した。
そして2025年秋、「FLOWLISH GUNMA」で3x3の活動を続けながら、Wリーグの「三菱電機コアラーズ」へ加入。これまでWリーグ選手がオフシーズンに3x3をプレーする例はあったが、シーズンを通して両方を行き来する女子選手は彼女が初めてだ。現在も3x3女子日本ランキングNo.1に君臨している。
両立の難しさと、ともに成長する仲間への感謝
前例のない挑戦について、髙橋から5人制と3人制の“架け橋”になりたいという想いが伝わってくる。今年2月に「FLOWLISHGUNMA」で3x3日本選手権を制した際、昨秋から3x3とWリーグを往復する生活は「本当に大変です」と切り出し「体はもちろんきついのですが、そこはまだ自分でコントロールできる部分。やっぱり気持ちや頭の切り替えがすごく難しい」と本音を明かしていた。ただ、大変な思いをしてもなお、自分が取り組む意味も見出している。
「やっぱり、私しか今そういう選手がいない。私が頑張る意味だと思います。今シーズンは、探り探りでいろんなことにチャレンジする年になったと思いますが、またここからシーズンの区切りを迎えると思いますが、3人制で結果を残すことはもちろん、5人制もチームにもっとフィットして結果を残していけるように頑張りたいと思います」
今年5月以降、髙橋は国内の3x3公式戦には「FLOWLISH GUNMA」で参加し、海外を転戦するウィメンズシリーズには三菱電機の一員として参戦している。三菱電機の日本人選手は、髙橋を除けば今春から3x3を始めたばかり。当初は経験や戦術理解の不足から苦戦を強いられた。
しかし、実戦を重ねるごとにチームは急成長を遂げる。今回行われた『FIBA3x3 ウィメンズシリーズ 東京ストップ 2026』開催前までに6大会へ出場し、2度の3位入賞を記録。そして東京ストップでは、鬼門だった準決勝を初めて突破してみせた。決勝で敗れた直後、「めっちゃ楽しかったので、より勝ちたかったというのが正直な気持ち。悔しい」と本音を漏らした髙橋だったが、その表情には充実感も滲む。競技の“架け橋”という役割を自分一人ではなく、コアラーズ全体で担えるまでに成長した姿に、確かな手応えを感じていたからだ。

「私はもちろんどちらも経験はありましたけど、3人制の経験が無かった子たちが、ここまで今シーズンを通して成長できるというのを見せられているというのは、三菱電機というチームとして、すごく良い仕事をしていると思います。日本の3x3界にも、すごく良い存在になれているんじゃないかと思っています」
また、5人制と3人制を行き来できる環境への感謝も忘れない。今年2月の3x3日本選手権には吉田亜沙美や澤知央(#38)らチームメイトが応援に駆けつけ、今回の東京ストップでもスタンドから声援を送っていた。5人制の練習を抜けて海外遠征へ向かう難しさもある中、チームが背中を押してくれるからこそ成り立つ挑戦だ。
「私たちが5人制の練習から抜けて(3x3の試合へ)行くことが多くて、もちろんチームとしてはマイナスというか、フルメンバーで練習できないところも理解してくれています。チームメイトたちが応援してくれるというのも、すごく自分たちにとって力になると思っているので、頑張ります」
8月末の高崎ストップへ出場。愛着のある街で優勝なるか
「三菱電機」は目下、ウィメンズシリーズのツアーランキングで世界9位(8月22日時点)につけている。9月5日・6日に上海で開催される年間優勝決定戦「ファイナル」に進出できるのは上位8チーム。初参戦ながら、大舞台への切符は十分に射程圏内だ。
髙橋も東京ストップを終えた際は「シンガポール(ストップ)とその次がバンコク(同)、最後に高崎(同)と、あと3つのウィメンズシリーズへ出場を予定しています。本当に最後まで、ファイナル進出を諦めずに戦い続けていきたい」と意気込んでいた。
奇しくも、ファイナル前最後の開催地は群馬県高崎市。ここは髙橋が3x3で所属する「FLOWLISH GUNMA」のホームタウンであり、同チームが主催者となって8月29日・30日に「FIBA 3x3 ウィメンズシリーズ 高崎ストップ」が高崎アリーナで初開催される。
髙橋は「三菱電機」の選手として出場するが、愛着のある街でプレーできる絶好の機会だ。彼女は「FLOWLISH GUNMA」の選手であると同時に、自らスポンサー営業に足を運ぶなどチーム運営にも深く携わってきた。それだけに、彼女の奮闘を知る多くのファンが会場へ駆けつけるはずだ。

髙橋は高崎の魅力をこう語る。
「繋がりが強い街だと思います。ご飯を食べに行って、何をやっているんですかという話から、ポスターを貼ってくださいみたいな流れもあったりします(笑)。スポンサーさんたちの力があってこそですが、この方にスポンサーをして頂いていると言えばポスターを貼ってくださる方もいて、その横の繋がりはすごく良い」
お世話になった街で、チャンピオンボードを掲げることを目指す2日間。これまで「あと一歩」で頂点を逃してきただけに、地元からの大声援はNo.1を掴み取る大きな後押しとなるだろう。昨春のアジアカップ後には「世界で一番を取れる選手になりたい」とも語っていた髙橋。5人制と3人制をクロスオーバーする挑戦の果てに、高崎のコートで最高の歓喜を爆発させる姿を楽しみにしたい。

文=大橋裕之

