本場の思考と「世界で戦うメンタリティ」を次世代へ
NBA docomoを担当するNTTドコモの小田貴宣氏は、今回の学生向けイベントについて、本場のトップレベルで活躍した選手と直接触れ合うことで、技術だけでなく「世界で戦うメンタリティ」や「夢を持つ大切さ」を伝えることが狙いだと説明する。
「次世代のプレイヤーたちにとって一生の財産となる体験を提供し、日本のバスケットボール界全体の底上げをサポートしたいと考えています」

NBAのロサンゼルス・クリッパーズで本契約を目指す河村勇輝は、身長172センチ。NBAの中では最も小柄な選手の一人だが、抜群のスピードとパスセンスを武器に、世界最高峰の舞台へ挑み続けている。
1990年代を代表するスターのリッチモンドは、かつてサクラメント・キングスで身長168センチのスパッド・ウェッブとチームメートだった。ウェッブは小柄ながらNBAで長く活躍し、スラムダンクコンテストでも優勝した異色の選手だ。リッチモンドは河村について「まだしっかりプレーを見ることができていない」として直接的な比較を避けながらも、NBAのキャンプに参加できること自体に大きな価値があると話した。

「まず、チャンスがあることをものすごく大切なものとして受け止めることが重要です。キャンプに行けるという時点で、ものすごいことです。そこを非常に大切にしないといけません」
NBAのチームと本契約を結べる選手はごくわずかだ。キャンプへ招待されても、シーズンを戦うロスターに入れる保証はない。それでも、その一度の機会だけですべてが決まるわけではないとリッチモンドは続ける。
「これが最後のチャンスになるとは思わないことです。世界中にプロバスケットボールがあります。NBAでなかったとしても、どこでもプレーできるチャンスはいくらでもあると思うので、そこへ向かってぜひ頑張ってほしいです」
目の前の機会を最大限に生かしながら、その結果だけで自分の可能性を狭めない。その言葉には、長くプロの世界を生きた選手ならではの実感がこもっていた。
ハワードが伝授する「自信」と「与えられた舞台を楽しむ姿勢」
ハワードが、外国人選手として異国で活躍するために最も必要だと語ったのは「自信」だった。
「とにかく自信を持つことです。身長は正直、そこまで関係ありません。自分を信じてプレーできるかどうかです」
ハワードはNBAで長くセンターとしてプレーした。本人はNBAのセンターとしては小さい部類だったとの認識を示しながら、それでも世界最高峰のビッグマンとして活躍できた理由を、自分を信じ続けたことに求めた。

「自分自身もセンターとしては小さい部類でした。その中でしっかり活躍できたのは、自信を持ってプレーしてきたからです」
もう一つ、ハワードが強調したのが、与えられた舞台を楽しむことだった。
「何よりも楽しむことです。数少ないチャンス、与えられたチャンスをしっかりつかんで、楽しむことがすごく重要だと思います」
それはハワード自身が、NBAでのキャリアを通じて体現してきた姿勢でもある。試合中も笑顔を絶やさず、豪快なプレーやパフォーマンスで観客を沸かせてきた。
「NBA選手になることは子どもの頃からの夢でした。全体1位で指名され、NBAで活躍するチャンスを与えられた。本当に恵まれた機会だったので、全力で楽しんでいました」
いつも笑顔でいることで、真剣さを疑われることもあった。それでもハワードにとって笑顔は、競技を軽く考えているからではなく、夢をかなえた喜びの表現だった。
「常に笑顔だからといって、真面目に取り組んでいないわけではありません。本当に楽しい、うれしいという表現です。2万人の前でプレーして、いろいろな街や世界中を回ることができる。その喜びから来るものです」
熱狂を未来へつなぐ——レジェンドたちの言葉が残したもの
小田氏は今回のイベントを一度限りで終わらせず、レジェンドの来日イベントやパブリックビューイングなど、ファンや子どもたちが熱狂を共有できる場を継続的につくりたいと話す。首都圏だけでなく、地方都市や地域のバスケットボールコミュニティとの連携も視野に入れているという。

リッチモンドが河村に伝えたのは、与えられたチャンスの価値。ハワードが伝えたのは、体格に左右されず自分を信じ、挑戦そのものを楽しむことだった。
チャンスを大切にすること。自信を失わないこと。そして、夢へ挑める時間を楽しむこと。2人のレジェンドが日本で伝えた言葉は、NBAを目指す河村だけでなく、これから世界へ挑む若い選手たちにも向けられている。
文=一野 洋

