炎天下での緊急事態!倒れかけた男性を救護
私が30代だった時の夏のことです。気温が35度を超える猛暑日でしたが、夏こそ体力をつけるチャンスとばかりに走りに出かけました。現代では偏った考えだと思いますが、その頃はそう考える人も多かったです。強い日差しを浴びながら走っていると、前方を走る60代と思われる男性の様子がおかしいことに気がつきました。フラフラと蛇行しながら走っており、足元はおぼつかない状態。心配になって声をかけると、男性は「大丈夫」と答えましたがその表情は虚ろで、足もつっている様子でした。
当時、スポーツトレーナーとして高校生などを診ていた経験から熱中症の症状が出ていると判断した私は、ランニングを中断し男性を日陰へと誘導しました。水分補給を促そうにも近くに自販機などはなく、男性は携帯電話すら持たずに走っていたようです。このまま放置すれば命に関わると感じた私は自分の携帯電話を取り出し、男性から娘さんの連絡先を聞き出して状況を説明し、すぐに車で迎えに来てもらうよう手配しました。
現れたのはまさかの元カノ……不思議な秋の再会
しばらくして、指定した場所に一台の車が急いでやってきました。急病の父親を心配して駆けつけた娘さんですが、車から降りてきた彼女の顔を見て私はびっくりしました。なんと、現れたのは以前お付き合いをしていた私の「元カノ」だったのです。お互いに一瞬言葉を失いましたが、今はそれどころではありません。急いで父親を車に乗せ、私は娘さんに、涼しくして、冷やすとよい箇所をアドバイスし、水分を十分とるよう告げました。それでも症状が悪い時や、水分を身体が受け付けないときは、すぐに病院を受診するようにと。そこからよりを戻すようなロマンスは一切ありませんでしたが、ただただ思いがけない展開に驚かされるばかりでした。
そして、物語はこれで終わりません。その年の秋、私はフルマラソンの大会に出場しました。レース中盤、軽快な足取りで私を追い抜いていくランナーがいました。ふと顔を見ると、なんとあの夏に救護したお父様だったのです。すっかり元気になったお父様に、本番のレースで見事に抜き去られてしまうという、なんとも不思議なご縁を感じずにはいられない結末となりました。
【体験者:50代・男性、回答時期:2026年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
Qolyコラムニスト:おかもとたかひで
鍼灸師の国家資格を保有し、スポーツにおける故障の治療を中心に活動している。特に高校生の部活動でのケガからプレー復帰までの道のりや、ケガ予防を含めたコンディショニング指導に注力しており、過去にはオリンピック選手の治療に携わった経験も持つ。また、自身も千葉ロッテマリーンズの試合観戦に頻繁に足を運んでおり、球場での熱気や、ファンと選手の間で生まれるリアルなエピソードを交えたコラム執筆も行っている。

