以前は嫌味を言われていた、元チームとの対戦
娘は、競技を始めた4歳の頃からチーム練習の前後や週末のすべてを、リンクでの自主練習に費やしてきました。休館日の水曜日を除けば、平日の夕方から夜にかけても、その時間のすべてをリンクに注いでいます。
娘が小学1年生の頃、対戦相手は、以前別の理由で離れた元チームでした。そのチームには、娘の自主練習について「そんなことをしても無駄だよ」とからかったり、「お父さんが経験者だからいいよね」と、努力よりも家庭環境を理由にした嫌味を言ってきたりする親子がいました。
実際、夫はアイスホッケー経験者ですが、娘自身の氷の上での努力があるのみです。この日の会場にも、その親子の姿がありました。
フェイスオフから、単独でゴールまでパックを運ぶ
試合中、センターのポジションでフェイスオフに入った娘が、パックを奪いました。本来であれば、奪ったパックを後方の選手につなぎ、味方と連携しながらゴールに迫るのが、アイスホッケーの王道のスタイルです。
しかしこの場面で娘が選んだのは、自分ひとりでパックを運びきるという判断でした。パックを奪った瞬間にクイックなターンでキープし、そのまま単独でゴールへと向かいました。日々の自主練習で磨いてきたアウトエッジの感覚が、相手をかわすターンを支えました。
立ちはだかったのは、体格で大きく勝る5年生のキーパーです。小学1年生の娘が放ったシュートは、その肩口という際どいコースへ、正確に決まりました。
観客席からの歓声と、静かに引き上げた元チーム
ゴールの瞬間、新チームの仲間や保護者からは「よっしゃー、ナイスゴール!」という声援が上がりました。リンクの中の娘は、家で決めていたゴールパフォーマンスを忘れるほど、両手を高く突き上げ、笑顔で観客席の私に向かって「やったー!!」と叫びました。
試合後、普段であれば、会うたびに何かしら嫌味を口にしてくるその親子の姿がありました。
しかし、この日は私を見かけても何も言わず、そそくさと会場を後にしました。
公式戦初ゴールの正体
娘にとって、これが公式戦での初ゴールでした。
かつて自主練習を無駄だと笑っていた相手の目の前で、努力が実力に変わり初ゴールという結果になって表れました。
【体験者:30代・女性、回答時期:2026年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
Qolyコラムニスト:村岡栞里
子どものアイスホッケー環境を整えるため、九州から北海道への移住を果たした、並外れた行動力を持つ親目線ライター。5年を超えるキャリアを経て、新天地でさらなる高みを目指す娘の競技生活を「現在進行形」で全力サポートしている。これまでの道のりで、指導者や保護者間のリアルな人間模様、子どもたちが直面する葛藤を肌で感じてきた。今もまさにその渦中に身を置き、苦楽を共にしているからこそ紡げる「生きたエピソード」が最大の強み。現場のリアルな息遣いが伝わるコラムを執筆している。

