絆の裏に潜むライバル心──同じ夢を追う二人のスタートライン
ソフトボールの強豪校に入学した妹は、本気で競技に向き合うため、親元を離れて寮生活を始めた。
新1年生で寮に入ったのは妹を含めて5人。その仲間たちと暮らし始めて4ヶ月が過ぎた頃、3年生が引退して新チームが始動した。
妹のポジションはピッチャーだ。同期にもピッチャー志望が多く、寮生の中にも同じポジションを狙う「Aちゃん」がいた。中学時代にエースとして活躍していた実力者だ。
友情から孤立へ──冷ややかな部屋に流れる重い空気
それまでの4ヶ月間、2人は同じポジションゆえの悩みを分かち合い、厳しい練習をともに乗り越えてきた。しかし、新体制のスタートを境に関係が変わってしまう。
監督から「2週間後に次の大会に向けて、スタメンを決めるための紅白戦を行う」と告げられたのだ。
妹はなんとしても枠を勝ち取ろうと、必死に練習を重ねた。そして、できればAちゃんと一緒にスタメンに入りたいと考えていた。
だが、Aちゃんの受け止め方は違った。自分より妹が一歩リードしていると感じた彼女は、焦りと嫉妬から次第に妹を避けるようになった。寮で話しかけてもそっけない返事ばかりで、部屋には重い空気が流れた。
自分にだけ冷たい態度を取るAちゃん。何か嫌なことをしてしまったかと妹は頭を悩ませたが、Aちゃんの態度は良くなるどころか、最終的には挨拶すら無視されるまでになった。
「絶対に負けない」──孤立を力に変えて立ったマウンド
そこまで拒絶されると、さすがの妹も腹が立った。「一緒に頑張ろう」という甘い気持ちは捨て、「絶対に負けない」と強い対抗心を燃やして残りの期間を走り抜いた。
迎えた紅白戦の当日、準備を尽くしてきた妹は落ち着いてマウンドに立った。結果は無失点。納得のいく投球ができた。
一方で、妹の後に登板したAちゃんはプレッシャーからか本来の力を発揮できず、思うような結果を残せなかった。
後日発表されたスタメンに妹の名はあったが、Aちゃんの名はなかった。寮生の中で落選したのは彼女だけだった。
【体験者:20代・女性、回答時期:2026年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
Qolyコラムニスト:kana
学生時代はソフトボールに打ち込み、現在も夫とスポーツ観戦を楽しむWebライター。周囲にはさまざまな競技に携わってきた友人や家族が多く、選手たちの努力や葛藤、チーム内で生まれる人間関係に強い関心を持っている。試合結果だけではなく、その裏側にあるエピソードや思わぬ出来事に目を向け、スポーツの現場で生まれる感動や驚きを、読者にわかりやすく届けるコラムを執筆している。

