新人戦の初戦、サーブは1年生のNくんだけに集まった
私が高校2年の秋、バレー部で迎えた新人戦の初戦でのことです。相手はサーブを1年生のNくん一人に集め、ほかの選手にはほとんど打ってきませんでした。
Nくんの返球は乱れ、一本ごとに上級生がフォローへ走ります。攻撃を組み立てる前に体力を削られ、思うように得点が伸びない展開が続きました。
「代えた方がいい」コート内から上がった声
第2セットの途中には、コート内から「もう1本も返ってない」「代えた方がいい」という声が上がりました。Nくんは下を向いて謝るばかりで、ベンチも交代の準備に入りかけていたのです。
私自身、Nくんに何と声をかけるべきか、答えを持っていませんでした。
タイムアウト中、Nくんが顧問に伝えた申し出
流れが止まったタイムアウト中、Nくんは自分から顧問のもとへ行き、「僕をもっと狙わせるようにしてください」と申し出ました。
続けて説明したのは、立ち位置を半歩前に変え、上げる先をセッターではなくコート中央に固定するという提案です。狙われている本人が、外れるのではなく引き受けると言うのですから、私たちは半信半疑のままコートへ戻りました。
逆転で初戦突破、試合後に先輩たちが頭を下げた
再開後も、サーブは変わらずNくんへ集まりました。それでも返球は徐々に安定し、味方が構え直す時間が生まれます。
相手が狙いを変えた第3セットには上級生の攻撃が通り始め、私たちは逆転で初戦を突破しました。試合後、交代を口にした先輩たちは、Nくんに頭を下げたのです。
まとめ
新人戦の後、部のレシーブ練習は「一番狙われる人が指示を出す」形に変わりました。守る側が黙って耐えるのではなく、的にされた本人が周りを動かすやり方です。
Nくんは翌春、リベロとして定着しました。チームで誰か一人にサーブが集まっているなら、その選手に指示役を任せてみる価値はあります。
【体験者:20代男性・会社員、回答時期:2026年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
Qolyコラムニスト:Yutel_06
幼少期からさまざまなスポーツに親しんできた、10代の現役学生ライター。合気道やテニス、アーチェリーなど、ジャンルの異なる競技と向き合ってきた。自身の経験に加え、周囲にもスポーツに取り組む友人や知人が多く、競技の裏側や選手ならではの悩み、恋愛、人間関係など、リアルなエピソードに触れる機会がある。そうした実体験や身近な声をコラムとして執筆している。

