よく遅刻をする同級生Aに、先輩がついにキレた。
内緒にしていた本当の理由とは──?
いつもギリギリの同級生
私が所属していたバスケ部には、週末や長期休暇の練習日に限り、開始時間ギリギリに来る同級生のAがいた。
時々、練習開始時間にも間に合わず、先輩たちからは「また遅刻か」と思われていた。
普通に考えれば、良くない行動である。
しかし私たち同級生は、その遅刻の理由を知っていた。
同級生だけが知っていた秘密
Aは朝、新聞配達のアルバイトをしていたのだ。
シングルマザーの家庭で、少しでも家計を助けるために働いていた。
平日は登校前まで、週末は少し長く働き、そのまま部活に参加する毎日。
だから、少しくらい練習に遅れてきても、私たちはAを責めることはなかった。
Aが先輩たちに隠していたのは、早朝の新聞配達をしていることが恥ずかしかったから。
それと、バイトと部活を掛け持ちしていると知られたら、「部活に集中しろ」と怒られると思っていたからだ。
そのため、私たち同級生もその秘密を守っていた。
「辞めろよ」ついに先輩がキレた
ある日、Aがいつものように練習開始時間を少し過ぎたタイミングで来た。
すると先輩が「また?なんで毎回遅いねん」と注意した。
Aは何も言い返さず、頭を下げて「すみません」と謝った。
ここまではいつもの光景だ。
「やる気ないんやったら、部活辞めろよ」
先輩はそう言い、明らかにキレていた。
それを聞いた私たち同級生は、思わず顔を見合わせた。
さすがに、このまま黙っているわけにはいかない。
その日の練習が終わったあと、私たちはAがいないところで先輩に事情を話した。
「実は、Aのところは片親で、家計を助けるために朝から新聞配達をしてるんです」
先輩は、しばらく何も言わなかった。
遅刻の理由を知った先輩の行動
事情を知った先輩は、翌日、Aに声をかけた。
「昨日は、理由も聞かずに辞めろなんて言ってごめん」
突然謝られたAは、驚いたような顔をしていた。
先輩は「理由があってバイトしてるなら、言ってくれたらよかったのに」と続けた。
Aにとっては、家の事情もアルバイトをしていることも、簡単には人に話せないことだった。
でも、先輩も事情を知らなかったからこそ、遅刻だけを見て注意してしまった。
その日から、先輩は遅れてきたAを一方的に責めることはなくなった。
【体験者:40代・女性、回答時期:2026年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
Qolyコラムニスト:maki
学生時代からスポーツ・部活動に打ち込んできた40代。現在はサッカースクールに通う子供の親として、スポーツと関わりを持つ。自身の経験談はもちろん、チームメイトや友人・知人から聞いたスポーツにまつわるリアルなエピソードを中心に取材し、スポーツの現場で起きた人間ドラマをコラムとして執筆している。

