理不尽な環境から離れ、所属先のない日々へ
これは、娘が小学3年生の時、以前のアイスホッケーチームを離れ、次のチームが決まるまでの間の話です。指導者や周囲との関係にストレスを抱える状態が続いていた以前のチームでは、レッスンや自主練習を重ねても、スケーティング技術はなかなか上達しませんでした。
チームを離れてからも、私たちは特別な練習メニューを新たに組んだわけではありません。娘は所属先が決まらないまま、これまでと同じようにリンクへ通い、自主練習を続けていただけでした。
特別なことをしていないのに、変わった滑り
ところが、チームを離れてから1ヶ月ほどが経った頃、娘のスケーティングは目に見えて力強くなっていきました。
以前は思うように出せなかったスピードや安定感が、練習を重ねるごとに増していきます。
指導者が付いていたわけでも、練習量を増やしたわけでもありません。変わったのは、娘を取り巻く環境だけでした。
リンクで尋ねてきた元チームの保護者
娘が自主練習をしていたリンクに、以前所属していたチームの保護者2人が居合わせたことがありました。同じ地域のリンクを利用しているため、退部後も顔を合わせる機会があったのです。
滑る娘の姿を見た2人は私のところへやって来て、「どんな練習をしているんですか」「何か隠れて練習をしていたんですか」と尋ねてきました。
私は、練習内容を特に変えていない事実をそのまま伝えました。「もともとこの技術はあったはずなんですよ。精神的な解放だと思います」
話を聞いた保護者の一人は、娘が以前のチームで指導者から理不尽な扱いを受けていたことを知っていました。その保護者は、少し間を置いてから、小さくうなずきました。
「あの滑り方」と、もう一人の保護者も
後日、最初に声をかけてきた2人のうち、もう一人の保護者が、こう声をかけてくれました。
「なんであんな力強いスケーティングができるようになったんですか」「うちの子にも、娘さんを見て、あの滑り方だよと、教えているんです」
以前のチームでは、出る杭のように打たれ続けてきた娘の力。打つ相手がいなくなった途端、一気に伸び始めていたのです。
【体験者:30代・女性、回答時期:2026年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
Qolyコラムニスト:村岡栞里
子どものアイスホッケー環境を整えるため、九州から北海道への移住を果たした、並外れた行動力を持つ親目線ライター。5年を超えるキャリアを経て、新天地でさらなる高みを目指す娘の競技生活を「現在進行形」で全力サポートしている。これまでの道のりで、指導者や保護者間のリアルな人間模様、子どもたちが直面する葛藤を肌で感じてきた。今もまさにその渦中に身を置き、苦楽を共にしているからこそ紡げる「生きたエピソード」が最大の強み。現場のリアルな息遣いが伝わるコラムを執筆している。

