ディフェンスの覚悟を決めたばかりの抜てき
娘が小学4年生の時の話です。アイスホッケーを始めてから、それまでポジションを固定せず、色々な役割を経験してきた娘でしたが、あるときコーチから、ディフェンスゾーンからパックを持って駆け上がり、シュートまで持っていくプレーを評価してもらいました。
これをきっかけに、娘はディフェンスとしてやっていく覚悟を決めたばかりでした。そんな時期に、5年生中心のメンバーによる練習試合にディフェンスとして招集されました。ポジションを固めて間もない中での、上級生カテゴリーへの抜てきでした。
上級生とポジション、二つの不慣れによる緊張
試合が始まると、娘の動きにはいつもの硬さとは違う、強い緊張が見えました。パックへの寄せは慎重すぎるほど遅く、スケーティングの幅も普段より小さくなっていました。
上級生を相手にすること自体が初めてに近い上、ディフェンスというポジションにもまだ慣れていない時期です。二つの不慣れが同時に重なり、判断も動きも普段より縮こまっているようでした。
ベンチで先輩がくれた「好きな方でいいよ」
交代でベンチに戻った娘に、声をかけたのは5年生の先輩でした。普段はあまり接点のない上級生です。真面目な表情で、真剣な口調のまま「レフトとライト、好きな方選んでいいよ」娘自身のプレースタイルを確認するというより、本人の判断に任せるような言い方でした。
接点の少ない相手から一方的に指示されるのではなく、選ぶ余地を残してもらえたことに、娘は少し驚いた様子を見せていました。
緊張がほどけ、続いた先輩の声かけ
娘は結局、普段からやり慣れている側を選びました。この一言をきっかけに、娘の表情から強張りが消えていきました。パックへの寄せは早くなり、スケーティングの幅もいつもの大きさに戻っていきました。
それ以降も、練習で顔を合わせるたびに、その先輩は「もっと好きにやってごらんよ」と声をかけてくれるようになりました。ディフェンスへの覚悟は決まっていても、まだ不慣れなタイミングでの抜てきに硬くなっていた4年生を、先輩の一言が解きほぐした一幕です。
【体験者:30代・女性、回答時期:2026年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
Qolyコラムニスト:村岡栞里
子どものアイスホッケー環境を整えるため、九州から北海道への移住を果たした、並外れた行動力を持つ親目線ライター。5年を超えるキャリアを経て、新天地でさらなる高みを目指す娘の競技生活を「現在進行形」で全力サポートしている。これまでの道のりで、指導者や保護者間のリアルな人間模様、子どもたちが直面する葛藤を肌で感じてきた。今もまさにその渦中に身を置き、苦楽を共にしているからこそ紡げる「生きたエピソード」が最大の強み。現場のリアルな息遣いが伝わるコラムを執筆している。

