高校時代のラグビー部で、他校の厳しい監督から理不尽な説教を受け続けた裏に隠されていた、父の愛情と密命にまつわるエピソードです。自分のチームが試合をしていない時でさえわざわざ説教をされ、すっかり機嫌を損ねて帰宅した筆者を待っていたのは、父親の不気味な笑みでした。大人になってから明かされる、熱くも笑える話をご紹介します。

過酷を極めた秋の合同練習試合シーズン

筆者が中高一貫校に通い、ラグビー部に所属して部活動に明け暮れていた高校生の頃のエピソードです。ラグビーは冬が本格的な大会の季節となるため、夏の厳しい合宿を乗り越えた後の秋の初めのシーズンは、その成果を確かめるための重要な時期となります。そのため、毎週末のように複数の学校が集まり、対戦していく合同練習試合が組まれていました。1日に1試合で終わるような甘いものではなく、何度も試合をこなさなければならない過酷なスケジュールです。さらに、当時の監督の意向もあって毎試合のようにポジションが変更されるため、不慣れなポジションでのプレーを強いられる部員たちは疲労が倍増する日々を送っていました。

他校の選手にも容赦ない鬼監督のターゲットに

そんな疲労困憊の中で迎えたある週末も、いつものように合同練習試合が行われました。しかし、その日の相手チームの中には、指導が厳しいことで有名な監督が率いるチームが含まれていたのです。その監督は、試合中であるにもかかわらず頻繁にプレーを止めては、今行われたプレーについてこんこんと長い説教をすることで知られていました。さらに厄介なことに、なぜか自分のチームの選手だけでなく他校の選手にまで容赦なく説教をするため、筆者はその監督のことが大嫌いでした。そして不運なことに、その日の鬼監督の怒りの矛先は、不慣れなポジションで戸惑いながらプレーしていた筆者に集中的に向けられてしまったのです。

理不尽な説教と愚痴に対する父親の不可解な態度

ポジションが変わってもターゲットにされ続け、さらには自分のチームが試合をしていない休憩のタイミングでさえ、わざわざプレーを止められて説教をされる始末。執拗で理不尽なダメ出しに、筆者はすっかり機嫌を損ねてしまいました。その日の試合後は怒りが収まらず、家に帰ってからも父親に対して文句を言いました。普通であれば同情してくれるはずの場面ですが、なぜか父親は慰めるどころか、筆者の愚痴を聞きながらただニヤニヤと笑うばかりでした。当時の筆者には、その父親の不可解な態度の意味が全く理解できませんでした。

大人になって明かされた父の密命と温かい真相

その不気味な笑みの謎が解けたのは、筆者がすっかり大人になってからのことでした。ある日、父親と一緒にお酒を飲んでいる席で、ついに当時の真相が打ち明けられたのです。実は、あの厳しかった鬼監督と父親は仕事を通じて知り合った飲み仲間であり、親しい間柄でした。そして、息子の忍耐力や精神力を鍛え上げるために、父親自らが「うちの息子を特別に厳しくしごいてやってくれ」と頼み込んでいたのです。後年、すっかりおじいちゃんになった当時の監督も交えて3人で酒を酌み交わす機会があり、当時の理不尽な怒りはすっかり最高の笑い話へと変わりました。親の深い愛情と、その密命に全力で応えてあえて悪役を買って出てくれた他校の恩師の温かさに、今となっては感謝せずにはいられないエピソードです。

【体験者:50代・男性、回答時期2026年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

Qolyコラムニスト:おかもとたかひで
鍼灸師の国家資格を保有し、スポーツにおける故障の治療を中心に活動している。特に高校生の部活動でのケガからプレー復帰までの道のりや、ケガ予防を含めたコンディショニング指導に注力しており、過去にはオリンピック選手の治療に携わった経験も持つ。また、自身も千葉ロッテマリーンズの試合観戦に頻繁に足を運んでおり、球場での熱気や、ファンと選手の間で生まれるリアルなエピソードを交えたコラム執筆も行っている。

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