高校最後の大会直前、バッティングの伸び悩みに一人苦しんでいた私。監督からの悔しい一言に火がつくも限界を感じていた私に手を差し伸べたのは、同じクラスの野球部Tさんだった。「教えてやる」の一言から始まった朝昼の猛特訓。迎えた本番で起死回生のタイムリーヒットを放ち、勝利を掴み取る。

「自分だけではどうにもならない」どん底の不振から

高校最後の夏を目前に控え、私は焦りと申し訳なさの中で一人頭を抱えていた。

ソフトボール部に所属する私の課題は、極度の打撃不振。打線がつながらず、チャンスで打席が回ってくるたびに「ここで自分が凡退したら」と胸が押し潰されそうになっていた。

「お前がもう少し打てるようになればな……」という監督からの容赦ない言葉。悔しさは山々だったが、自主練習を重ねても一向に快音は響かない。自分の力だけではどうにもならない限界を感じていた。

差し伸べられた手と、泥だらけの特訓日々

そんなある日、見かねたように声をかけてくれたのが、同じクラスで野球部に所属するTさんだった。「見てられないから教えてやるよ。グラウンド集合な」半ば強引で、けれど温かいその一言が、諦めかけていた私の背中を力強く押してくれた。

それから始まったのは、朝練と昼休み返上の特訓の日々だ。Tさんをはじめとする野球部員たちが代わる代わる付き合ってくれ、バットの軌道やボールの捉え方を根気強く指導してくれた。手のひらに新しいマメができ、泥だらけになりながらボールを追いかける時間だけが、私の不安を打ち消してくれた。

運命の大会で掴み取った「県大会ベスト16」

そして迎えた、運命の大会当日。

勝負どころで回ってきた打席で、私は深く息を吐き、教えてもらったフォームだけを意識してバットを振り抜いた。快音とともに放たれた白球は、綺麗な放物線を描いてセンターの頭上を越えていく。走者をホームへ返す起死回生のタイムリーヒット。ベンチからの歓声と少し驚いたような監督の拍手が響く中、チームは怒涛の快進撃を続け、見事「県大会ベスト16」という結果を掴み取った。

部活を通じて生まれた絆は、大会が終わっても消えることはなかった。あの夏、本気で向き合ってくれたTさんは、今では私の人生を共に歩むパートナーとなっている。不器用だけど真っ直ぐだったあの特訓の日々は、一生忘れることのない、私たちの原点だ。

【体験者:30代・女性、回答時期:2026年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

Qolyコラムニスト:kana
学生時代はソフトボールに打ち込み、現在も夫とスポーツ観戦を楽しむWebライター。周囲にはさまざまな競技に携わってきた友人や家族が多く、選手たちの努力や葛藤、チーム内で生まれる人間関係に強い関心を持っている。試合結果だけではなく、その裏側にあるエピソードや思わぬ出来事に目を向け、スポーツの現場で生まれる感動や驚きを、読者にわかりやすく届けるコラムを執筆している。

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