これは、筆者と友人Nちゃんが中学生の時の話。
いつも「声を出せ!」と言う顧問から、まさかの「ちょっと抑えてくれ」と頼まれた理由とは──?

ベンチから誰よりも声を出すNちゃん

私も所属していた中学のバスケ部に、Nちゃんというチームメイトがいた。
Nちゃんはレギュラーではなく、ベンチから仲間を応援することが多かった。

そんなNちゃんの特徴は、とにかく声がよく通ること。
ちなみに歌も上手い。
普段の練習中からチームを盛り上げてくれる存在だ。
試合になれば、さらにその声は大きくなった。
「ナイシュー!」
「ディフェンス一本!」
そんな声がベンチから飛び続ける。

接戦で、さらにヒートアップ

ある日の試合は、最後までどちらが勝つか分からない接戦だった。
コートにいる選手たちはもちろん、ベンチにいるメンバーも必死になって応援する。
そして、そんな場面で誰よりも熱くなっていたのがNちゃんだった。

声援は途切れることなく、どんどん大きくなっていく。
顧問も普段から「もっと声を出せ!」と言うタイプだったため、Nちゃんも遠慮なく声を出していた。
チーム全体が一丸となって戦っている、そんな雰囲気だった。
ただ、ひとつ問題があった。

「N、ちょっと抑えてくれ」

Nちゃんの声が、あまりにも大きかったのだ。
ついにはコートに指示を出している顧問の声まで、Nちゃんの声援にかき消されるようになった。
普段なら「声を出せ」と言っている顧問。
ところが、その日は苦笑いしながらNちゃんに声をかけた。

「N、ちょっと抑えてくれ」

まさかのお願いだった。
Nちゃんは一瞬きょとんとしたあと、

「あ、すみません……」

と小さな声で返事。
それまで元気いっぱいだったNちゃんが、急にしゅんと小さくなった。
その姿を見たベンチのメンバーは、笑いをこらえるのに必死だった。

声を出すときと抑えるときのメリハリ

その後、Nちゃんは少しずつ、声を出すときと抑えるときの空気を読めるようになっていった。
大きな声で仲間を励ますことは、Nちゃんの大きな武器だった。
でも、チームスポーツでは、ただ声を出せばいいわけではない。
必要な場面では思い切り声を出し、指示を聞く場面では声を抑える。

あの日、顧問から「ちょっと抑えてくれ」と言われた経験が、Nちゃんにとっては声の使い方を考えるきっかけになったのかもしれない。

それにしても、普段は「もっと声を出せ!」と言っていた顧問から、まさか「抑えてくれ」と言われるとは……。
チームを盛り上げようと全力で声を出したNちゃん。
あの日の「ちょっと抑えてくれ」は、彼女の声がそれだけチームに響いていた証だった。

【体験者:40代・女性、回答時期:2026年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

Qolyコラムニスト:maki
学生時代からスポーツ・部活動に打ち込んできた40代。現在はサッカースクールに通う子供の親として、スポーツと関わりを持つ。自身の経験談はもちろん、チームメイトや友人・知人から聞いたスポーツにまつわるリアルなエピソードを中心に取材し、スポーツの現場で起きた人間ドラマをコラムとして執筆している。

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