長年クラブチームに関わっていたB監督
私が所属していたバレーボールクラブはB監督の権力が非常に強いクラブだった。結果も残しつつ、長年監督を務めているので保護者との結びつきも強固だった。
そのためたとえ不満があっても、B監督の耳に届く前に彼を慕う権力の強い保護者が介入し、解決してしまうことが多かった。すっきりと解決することもあるのだが、その話がなかったかのようにされることもあった。
B監督の不審な動きとCさんの【本音】
B監督は日頃の練習から平等に指導をしていないと感じることもあった。特に、団員のCさんには、あまり強い口調で指導をしない上に、話しかけたり関わったりすることが他に比べ多いように思えた。
不審に思った私は、監督の行動を観察することに。すると、練習後のストレッチの時間にCさんに近づいていることが多いと気付いたのである。
私は思い切ってCさんに尋ねた。
「B監督、Cさんと距離が近い気がするんだけど気のせい?」
するとCさんは重い口を開き、ある事実が判明。
「皆が一緒にいるときはあのくらいだけど、私が1人でいるときにはもっと近づいてくるの。ストレッチとかマッサージをしてあげるって言われたこともある」
しかし、Cさんはこう続けた。
「嫌だけれど、この件がおおごとになるのはもっと嫌なんだ……」
大人には頼らない! 中学1年生だけの作戦会議
おおごとにはしたくないと言うけれど……でもやっぱりこのままではいけない。そう思った私は同学年の団員を集めて作戦会議を開始。議論を重ねた結果、【Cさんのそばに必ず誰かがいよう作戦】ができあがった。
B監督はCさんが1人になった時を狙って声をかけている。それならば、1人になる時間をつくらないようにすればいいという考えだ。いつ、どこで、誰が、Cさんのそばにいるかという割り振りまでしたわけではない。1人になりそうなときは、さりげなく誰かがそばにいく。そんな暗黙の了解が私たちの間では存在していた。
Cさんから離れなければならないときには、他の団員に目配せをして配置換え。保護者の耳に入っておおごとになったり、監督を慕う保護者たちにもみ消されたりしないように、中学1年生の脳みそをフル活用してCさんを守ったのである。
結束から生まれた【自信と誇り】
幸いにも、B監督はCさんの周りに他の団員がいると執拗に近づいてくることはなかったので、それ以上エスカレートすることはなかった。もしかすると、B監督は私たちから放たれている“Cさんに近づかせない”という空気に感づいていたのかもしれない。
今思えば、子どもの力だけではなく大人の力も借りるべきだったと反省することもある。しかし、Cさんは未だに「あのとき皆が守ってくれたことが嬉しかった」と話す。私も心の何処かで、自分たちの力だけで大きな権力を持つ大人に立ち向かえたことを誇らしく思っている。
【体験者:40代・女性、回答時期:2026年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
Qolyコラムニスト:村木 あすみ
学生時代からスポーツ・部活動に打ち込んできた30代2児の母。また、公立中学校教員として勤務した経歴もあり、部活動にも携わってきた。自身のスポーツ経験や観戦、そして教育現場で見聞きしてきたリアルなエピソードをコラムとして執筆している。

