ゴルフ部のいとこの子が、練習ラウンドで案内係に風の読み方を教わった話。その人物の正体とは。

風に振り回された中学生

これは、私のいとこから聞いた話です。いとこのAは中学の女子ゴルフ部で、県大会の練習ラウンドに参加しました。

山あいのコースは風向きが変わりやすく、グリーン脇の旗を見て打っても、ボールが想定外の方向へ流れます。悩んでいると、カートの案内をしていた女性が「旗ではなく、奥の木の葉を見て」と声をかけました。

Aは、旗の方が近くて分かりやすいと思いましたが、女性は「この場所は谷から風が戻ってくるから」と、斜面の1本を指しました。

スコア表に描いた小さな葉

半信半疑で木を見ると、旗は右へなびいているのに、枝先の葉は左へ裏返っています。狙いを少し変えると、ボールはグリーン中央へ落ちました。

Aは残りのホールでも、旗、木の葉、池の水面を順番に見るようになります。スコア表の余白には、風がぶつかる場所を葉の絵で残しました。

最初は落書きのようだった印が、少しずつコースの地図に変わります。本番の日は朝から強い風が吹き、同じ組の選手たちが番手選びに迷います。Aも最終ホールまで1打差の接戦を演じました。

設計図と同じ線を引いた人

最終ホールで旗と木の葉が反対へ動きました。Aは練習ラウンドを思い出し、あえて風上へ打ち出します。ボールは空中で押し戻され、グリーン手前に止まりました。

大会後、クラブハウスに飾られた古い設計図を見ると、風の流れを示す線が、いとこのスコア表と同じ場所に描かれています。

図面の横に立っていたのは、あの案内係でした。彼女はコース改修に携わった設計担当者で、大会の日だけ運営を手伝っていたのです。

数字の外側を見る習慣

Aは入賞こそ逃しましたが、自己最高の順位で大会を終えました。女性へスコア表を見せると、「コースは数字だけでは話してくれない。ヒントを見つけるのもゴルフの醍醐味だよ!」と言われたそうです。

競技を続けるAは、距離表示だけでクラブを決めません。木の葉や水面、自分の立つ場所まで確かめます。

最終ホールで手に入れたのは攻略法ではなく、目の前の数字から一度顔を上げる習慣でした。

【体験者:40代・女性、回答時期:2026年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

Qolyコラムニスト:タニグチ
小学1年から水泳、4年から野球に打ち込み、大学卒業まで十数年をグラウンドで過ごしてきた30代。高校では主将を務め、大学では神宮の舞台にも立った。引退後は中学硬式(シニア)の指導者も経験し、「する」「観る」「教える」すべての視点でスポーツと向き合ってきた。その中で、勝敗の記録には残らない人間関係や、試合の裏側で起こる思わぬドラマに強く惹かれるように。チームメイトや教え子、友人・知人から聞いたリアルなエピソードを中心に取材し、執筆している。

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