ケガ人続出で満身創痍のバスケ部が迎えた公式戦。
あまりバスケが得意ではないA子が出場することになるのだが──?
ケガ人が多く、厳しい状態で挑んだ公式戦
当時のチームは、怪我に悩まされていた時期があった。
同級生の半数以上が膝や腰、足首など様々な怪我をしていて、レギュラーメンバーも3人が怪我を抱えていた。
完全に試合へ出られない子もいれば、少しならプレーできる子もいる。
そんな満身創痍の状態で、ある公式戦を迎えた。
試合は接戦になった。
ところが第4クォーターを前に、レギュラーの一人がファールトラブルで退場。
相手に勢いが付き、少し押され始める。
すると、顧問がベンチから私に向かって叫んだ。
「お前が行け!」
内心、「さすがにきついって!」と思いながら、私も必死だった。
点差を広げられないよう、がむしゃらに攻め続けた。
残り2分、限界を迎えたチームメイト
残り2分ほどになった頃、コートにいるチームメイトの一人が、明らかに足の痛みをこらえているのが分かった。
顧問もすぐに気づき、交代を指示。
そしてコートに入ったのがA子だった。
A子は、正直バスケが得意なタイプではなかった。
それでも「バスケは下手やけど、みんなと練習したりワイワイするのが楽しい」と言って、ずっと部活を続けている。
そんなA子にとって、公式戦の大事な場面でコートに立つのは、かなりのプレッシャーだったと思う。
緊張しているA子に、顧問は声をかけた。
「難しく考えなくていい。とにかくディフェンス!」
A子はうなずき、コートへ入った。
残り3秒、A子の一投
残り1分を切った時点で、私たちは2点差で負けていた。
両チームとも最後の力を振り絞り、激しい攻防戦。
残り時間はどんどん減っていく。
そして残り10秒。
ボールを持った私はゴールへ向かったが、相手に阻まれて思うように進めない。
その時、視野の端に飛び込んできたのは、フリーで待つA子だった。
私は迷わずパスを出した。
ボールを受けたA子は、ハーフライン近くにいた。
残り3秒──
A子はゴールを見て、ボールを投げた。
それはシュートなのかパスなのか、正直よく分からないフォームだった。
ブザーと共にリングに吸い込まれたボール
ボールはリングの手前に当たり、真上へ跳ね上がった。
同時に、試合終了のブザーが鳴った。
「あっ……」
誰もがそう思った次の瞬間──
ボールはそのまま、ストンとリングの中へ落ちた。
大歓声が体育館中に響いた。
A子が決めたのは、まさかのブザービーター。
しかも1点差の逆転勝利。
普段は「バスケは下手」と笑っていたA子が、最後の最後でチームを救った。
あのときの歓声と、A子の驚いた顔は、今でも忘れられない。
スポーツは、最後まで何が起こるか本当に分からない。
そう実感した出来事だった。
【体験者:40代・女性、回答時期:2026年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
Qolyコラムニスト:maki
学生時代からスポーツ・部活動に打ち込んできた40代。現在はサッカースクールに通う子供の親として、スポーツと関わりを持つ。自身の経験談はもちろん、チームメイトや友人・知人から聞いたスポーツにまつわるリアルなエピソードを中心に取材し、スポーツの現場で起きた人間ドラマをコラムとして執筆している。

