下級生が氷上にいた時間の出来事
これは、私の娘が小学4年生の時の話です。娘は北海道のアイスホッケーチームに所属していて、その日は1年生から4年生までの練習枠でした。
上の学年は別の日程で練習があるため、弟や妹がこの枠にいる6年生は、練習が終わるまで会場外で待つことになります。
娘たち下級生が氷上でパックを追いかけていた時間、6年生の男子選手3人は、施設の駐車場でボール遊びをしていました。壁に向かってボールを投げる、壁当てです。そのボールが施設の裏手にある窓に当たり、ガラスが割れました。
弁償までは、あっさり決まった
3人は自分たちがやったと名乗り出ました。
施設の担当者からは「正直に話してくれたから、弁償はいりません」という言葉が返ってきます。
それでもチームは弁償を申し出て、ガラスの費用は当事者である3人の保護者が負担することになりました。
練習が終わったあと、3人の保護者が監督とコーチにこの経緯を報告しているのを、私は娘の防具を片付けながら聞いていました。費用の話がついた時点で、この件は終わりに向かうように見えました。
叱られた理由は、割ったことではなかった
しかし、報告を聞いた監督とコーチが3人に向けたのは、弁償の話ではありませんでした。
「チームとしての責任でもある。だが、6年生にもなって、どうなるか予想もできずに遊んでいることがあり得ない」
叱責の対象になっていたのは、ガラスを割ったという結果ではなく、壁に向かってボールを投げ続ければ何が起きるかを、誰も考えていなかったことでした。3人はうつむいたまま、その話を聞いていました。
待ち時間の過ごし方が変わった
この一件のあと、チームでは館内でのボール遊びが禁止になりました。
禁止されたのは遊ぶことだけではありません。ボールを持ち込むこと自体ができなくなり、待ち時間の過ごし方がチーム全体で変わりました。
6年生の3人が叱られた理由は、ガラスを割ったことではありません。壁に向かってボールを投げ続ければどうなるか、3人とも立ち止まって考えなかったこと。下の学年が氷の上で練習している時間に、自分たちがどこでどう過ごすべきか。6年生に向けられた言葉の中身は、そこでした。
【体験者:30代・女性、回答時期:2026年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
Qolyコラムニスト:村岡栞里
子どものアイスホッケー環境を整えるため、九州から北海道への移住を果たした、並外れた行動力を持つ親目線ライター。5年を超えるキャリアを経て、新天地でさらなる高みを目指す娘の競技生活を「現在進行形」で全力サポートしている。これまでの道のりで、指導者や保護者間のリアルな人間模様、子どもたちが直面する葛藤を肌で感じてきた。今もまさにその渦中に身を置き、苦楽を共にしているからこそ紡げる「生きたエピソード」が最大の強み。現場のリアルな息遣いが伝わるコラムを執筆している。

