筆者が高校3年生のとき、陸上の大会に向かうときの出来事。積んだはずの荷物が学校に忘れ去られていた──!? 忘れられた荷物を抱え、大会会場の最寄駅から45分間必死に歩き続けた真夏の話。

うだるような暑さだった大会当日の朝

あれは高校3年生の大会当日。強い日差しが容赦なく私たちに照りつけ、外に出ただけで汗をかくような夏の日だった。

大会会場は、最寄駅から徒歩45分かかるところにあり、路線バスも本数が少なく、会場までは徒歩で向かうしかなかった。以前からこの会場はよく使っていたのだが、楽しく話しながら歩いていると長い道のりもあっという間だった。

学校から大会会場の最寄駅までも電車で1時間弱かかる。そのため、学校に集合しないほうが行きやすい部員は直接会場に向かうことになっており、この日は男子4名、女子3名の計7名だけが学校に集合していた。

あってはいけない場所に、あるはずのない【荷物】が

「学校集合組は全員揃っているね、出発しようか」と部長が言ったそのとき、荷物の山が視界に入った。最初はピンとこなかったのだが、いや……あれはもしかして私たちの荷物!? と全員が一斉に察し、そして青ざめた。

テント、ストレッチ用のマット2つ、ジャグ等の荷物を顧問が車に乗せて先に車で出発しているはずだった。大会前日に部員たちで車に荷物を積もうとしたが、「積むものを出しておいてほしい、自分で積むから」と言われ、指定された場所に荷物を置いて私たちは帰宅したのだ。

そして今日、なぜかその荷物が顧問の車の中ではなく、ここにある。慌てて部長が顧問に電話をすると、顧問は前日に積んだと思い込んでおり、部長の電話で積み忘れていたことを知ったのだった。さらに、自宅から直接会場に向かっているため、学校に一度寄ってしまうと間に合わないという最悪の状況に……。

全員で励まし合いながら大会会場へ

私は他の部員と顔を見合わせた。おそらく皆同じ顔をしていたと思う。しかし、顧問と話している部長がこう言った。──「全員で荷物を手分けして会場に向かいます」

部員が全員いるならまだしも、この場には7名しかいない。しかもレースを直前に控えている部員には極力負担をかけないようにするため、実質3名くらいで荷物を運ぶことになるのでは……? と、色々な考えが頭の中を巡っていた。しかし、こうなったらやるしかない。

大会会場の最寄駅に着いた私たちは、なるべくレースに支障が出ないようにしながら荷物を分担した。結局、早い時間帯にレースを控えている部員も、「自分たちも運ぶから大丈夫。レース前のアップになるからちょうどいいや」と言いながら手伝ってくれた。

普段はあっという間の道のりも、この日ばかりはいつもの何倍にも感じた。「頑張れ! あとちょっとだよ!」と声をかけ合い、汗だくになって真夏の炎天下を歩き続け、なんとか競技場に到着。レースはまだひとつも始まっていないが、達成感を得ていた。

積み忘れ事件を経て生まれた、新たな慣習

その後、顧問が平謝りだったことは言うまでもない。この積み忘れ事件以来、「置いておいて。あとで積んでおく」という顧問の言葉を信用せず、部長が顧問のトランクに荷物が入っているか必ず確認することが我が部の慣習になった。

自分で積むといった荷物を積んだつもりで積んでいなかった……という信じられないミスをした先生だったが、誠実な人柄だったこともあり、「きっと相当疲れていたんだよね」「大丈夫かな、ちゃんと休めているのかな」と部員たちから心配される始末だった。

【体験者:30代・筆者、回答時期:2026年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

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