飛んできたサッカーボールを蹴り返したK太くんが、人数合わせでゲームに参加することになる。K太くんの実力と正体は──?
グラウンドの横を通っただけのK太くん
ある日、グラウンドの横を通りかかった時のこと。
「危ない!」という声とともに、サッカーボールが勢いよく飛んできた。
K太くんは反射的に足を出すと、飛んできたボールをピタッと止めた。
そのまま数回ボールを蹴り上げ、軽くリフティング。
最後はボールをサッカー部へ返した。
その様子を見ていた部員たちは、
「え、今のすげー!」
「サッカーやってた?」
と声をかけた。
K太くんは「やってない」と答えた。
すると今度は、
「嘘やな。じゃあ、人数足らんからゲームだけ入ってほしい!」
と、信じてもらえないうえに、練習に誘われてしまった。
なぜか人数合わせでゲームに参加
K太くんは最初、断っていた。
ところが、サッカー部の顧問にまでお願いされてしまい、渋々ゲームに参加することになった。
しかし、ゲームが始まってみると、特に目立ったプレーはしない。
全力で走るわけでもなく、パスが回ってきても近くの味方へすぐ返す。
ディフェンスも相手から少し離れ、守っているような、いないような。
「さっきのリフティングは何だったんだ?」
部員たちも少し拍子抜けしていた。
ディフェンスが寄った瞬間、突然の神業
そんな中、K太くんにパスが回った時、相手ディフェンダーが一気に距離を詰めてきた。
その瞬間だった。
K太くんはディフェンスに背を向け、足元のボールを軽く浮かせると、ボールを頭上へ。
そのままディフェンダーの頭上を越し、くるりとディフェンスの背中へ回ったK太くんは、ボールを地面に落とすことなく、味方へピタリとパスした。
「……え?」
周囲が一瞬静かになり、そして賑やかになった。
K太くんは何事もなかったように、元の位置へと戻っていく。
その後も、相手が強く寄せてきたときだけ、まるで別人のようなボールさばきを見せた。
フリースタイルフットボール
ゲームが終わると、部員たちがK太くんに集まった。
「サッカーやったことないって嘘やろ?」
そう聞かれたK太くんは、笑いながら答えた。
「いや、サッカーはやったことない。リフティングだけは得意やけど」
実はK太くんは、昔からリフティングが好きだったという。
今でいうフリースタイルフットボールのように、ボールを浮かせたり、足元で操ったりする技をずっと練習し続けていると話してくれた。
部員たちは納得。
それでもK太くんは、サッカー部への勧誘には
「走るのしんどいから入らん」
と即答だった。
リフティングの技術だけでサッカー部員を驚かせたK太くんだったが、その才能をサッカーに活かす気は最後までなかった。
【体験者:30代男性・会社員、回答時期:2026年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。


