高価な道具でエリートを気取るチームに、煽られて挑んだ1イニング勝負の結果は──?
「自称エリート」たちとの遭遇
いつも通り確保したグラウンドへ向かうと、前の枠を使っていたチームが撤収の準備をしていた。
彼らは頭から足元まで最新のブランド品で揃え、手に握るバットも数万円は下らない高級モデルばかり。
一方の私たちは、型落ちのバットに、長年手入れしながら使い込んでいる革の剥げたグラブ。
入れ替わりのすれ違いざま、相手の男が私たちの道具をチラチラ見ながら声をかけてきた。
「おじさんたち~、物持ちがいいというか……道具ぐらい新しいの買った方がいいんじゃないですか?」
と、鼻で笑う。あからさまな煽りだった。
煽りに乗って始まった「1イニング限定」の緊急対決
あまりの言われようにチーム内が一瞬ピキッと緊張したが、キャプテンが「愛着ですよ」と穏やかに返した。
すると相手は調子に乗ったのか、「じゃあ次の試合まで時間あるし、ウォーミングアップがてら1イニングだけ試合やる? 道具の差を見せてあげますよ」と上から目線で勝負を挑んできた。
相手の鼻につく態度に全員の火がつき、急遽1イニング勝負の特別ルールで試合が始まることになった。
最新バットの大振りに、使い込んだグラブで応戦
先攻の相手チームは、高価なバットを大きく振り回していた。
だが、力が入りすぎているのか、空振りや打ち損じが続く。
基本ができていない打球は力なく打ち上がり、私たちは年季の入ったグラブで確実にアウトを重ねていく。
皮肉にも、彼らがバカにした私たちの道具は、毎週オイルを塗り込んで手入れされた最高の相棒だ。
続く私たちの攻撃では、相手の速球派ピッチャーが力強く投げ込んでくるも、甘く入った球を狙って確実に出塁する。
使い慣れた型落ちバットでしっかり捉えると、外野の頭を越えるタイムリーも飛び出し、1イニングで一気に得点を重ねた。
ぐうの音も出ない「自称エリート」たち
結果は大差で私たちの勝利。
ベンチに戻ってきた相手チームは、あんなに威勢が良かったのが嘘のように静まり返っていた。
「道具の性能も大事だけど、基本の練習が一番効くみたいですね。せっかくいい物使ってるんだから、ちゃんと手入れすれば長持ちしますよ」
とキャプテンが声をかけると、男たちは顔を真っ赤にして苦笑い。
逃げるようにグラウンドを去っていった。
高価な道具を否定する必要はないが、日頃の手入れと基本の積み重ねこそが大事だと実感した出来事だった。
【体験者:40代男性・自営業、回答時期:2026年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。


