補欠に卓球台を使わせない主将
これは、私の中学時代の後輩から聞いた話です。
中学2年で卓球部へ入った後輩は、転校前に競技経験がありませんでした。主将は「初心者は球拾いだけして」と言い、放課後の卓球台をレギュラーだけで独占します。
後輩が壁打ちを始めても、落ちた球を集めるよう指示しました。しかし顧問が来る時間になると練習させるため、表向きは全員が公平に台を使っているように見えていたそうです。
後輩は反論せず、拾った球を箱へ戻すたび、レギュラーの回転やコースを観察していました。
倉庫で続けた10分間の特訓
副顧問が事情に気づき、片付け後の10分だけ多目的室の古い台を使わせました。後輩は主将の横回転サーブを思い出し、ラケットの角度を変えて返す練習を繰り返します。部員2人も協力し、球拾いの時間と台を使った時間を毎日ノートへ記録しました。
校内戦の組み合わせが発表されると、主将は後輩と初戦で当たります。「球を拾っていた人に負けるわけがない」と笑いましたが、後輩は黙って闘志を燃やしたのでした。
球拾いで覚えたレギュラーのクセ
試合が始まると、主将は得意の横回転サーブを続けました。後輩は球拾い中に見ていた向きへラケットを合わせ、低く返します。
焦った主将はさらに強い回転をかけますが、後輩は3本連続で返しました。最後は長く浮いた球を打ち込み、逆転勝利を収めました。
主将が「こんなはずはない!なんで補欠が俺の球を返せるんだ」と騒ぎました。そこで副顧問が練習時間のノートを顧問へ見せます。ノートには、後輩が台を使えなかった日、主将の横暴がすべて記録されていました。
台を分けた新しい割り当て表
顧問は結果を変えず、主将へレギュラーだけの台使用をやめるよう指導しました。翌日から割り当てが作られ、経験に関係なく全員が平等に練習できるようになったそうです。
現在、地域の卓球教室を手伝う時は、初心者こそ最初に卓球台を使うよう案内しています。球拾いで覚えたことは無駄ではありません。それでも、球を打つ権利まで誰かが独占してよい理由にはならないと知っているからです。
【体験者:30代・男性、回答時期:2026年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。


