これは、大学時代まで剣道を続け、現在は子供たちを指導している50代女性Hさんの体験です。ある教え子から不審な男性につきまとわれていると相談を受け、周囲の大人と備えを続けた結果、その稽古が危険な場面でAくん自身を守る力になりました。

いつも同じおじさんがついてくる

Hさんは主婦業のかたわら、長年続けてきた剣道の経験を生かして子供たちを指導しています。今でも自身の昇段試験へ挑戦するなど鍛錬を欠かさず、教え子たちから悩みを相談されることも少なくありません。ある日、小学生のAくんから「習い事へ行くとき、いつも同じおじさんが後をついてくる」と打ち明けられました。道を変えても離れず、剣道ではない別の習い事の日にも現れることがあるといいます。HさんはすぐにAくんの母親へ連絡しました。

母親が用意した護身具は「すりこぎ」

当然、大人が毎回付き添えれば安心ですが、Aくんの母親も仕事があり、常に一緒に行動するのは難しい状況でした。それでもAくんは剣道を休みたくありません。そこで母親が持たせようと考えたのが、なんと「すりこぎ」でした。Hさんは驚きつつも、それだけに頼るのは危険だと考えます。そこで稽古の中でも、危険を感じたら距離を取り、大きな声を出し、周囲の人へ助けを求める練習を繰り返しました。

公園へ連れていかれそうになったAくん

そしてある日、その不審な男性がAくんへ近づき、近所の公園へ連れていこうとする出来事が起きました。恐怖で動けなくなっても不思議ではない場面です。しかしAくんは、Hさんとの練習を思い出しました。剣道で身につけた腹から声を出す要領で、大きな声を上げて助けを求めたのです。その声に近くにいた大人たちが気づき、すぐに駆けつけました。Aくんは男性から離れ、その場を逃れることができました。

剣道で鍛えていたのは技だけではなかった

周囲の大人たちが警察へ連絡し、不審な男性は警察へ引き渡されました。Hさんはこの出来事を通じ、剣道で鍛えているものは技だけではないと改めて感じたそうです。大きな声を出すこと、恐怖の中でも動くこと、困ったときに助けを求めること。日頃の鍛錬が、思わぬ形でAくんを守りました。もちろん母親が用意した「すりこぎ」の出番はありませんでした。それが何よりの結果だったのかもしれません。

【体験者:50代・女性、回答時期:2026年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

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