私の友人Aさんが初めてフルマラソンに挑戦したときの話である。Aさんと一緒に走ることになったNさんも同じくフルマラソン初挑戦。途中まで一緒に走っていたのだが、いつからか2人はバラバラに……先にゴールしたAさんは心配そうにNさんのゴールを待っていたが、まさかの展開に──!?

ひょんなことからフルマラソンへの挑戦を決めた私

人生で1度は走ってみたかったフルマラソン。しかし、きっかけがなくなかなか応募に踏み出せずにいた私だった。走り切ったらなんだか人生が変わるような気がして、ふと友人のNさんにその話をしてみた。

するとNさんはなんと「私も走る! 一緒に応募してみようよ」と驚きの返答をしたのである。Nさんに背中を押してもらった気がして、ついに応募することを心に決めたのであった。

しかしNさんも実はフルマラソン初挑戦。フルマラソンどころか、普段からあまり運動をする習慣もないタイプである。

離れ離れになった2人、それぞれが孤独と戦いながら走る

そして迎えた当日。2人の目標は「完走」だ。一緒に走っていたほうが気が紛れるだろうと、肩を並べて会話をしながら走り出した。スタートしてから順調に走っていた私たちだったが、15km地点を過ぎたあたりからNさんの膝に異変が……。

「先に走ってて!」と言われバラバラに走ることになったのだが、そこから私はフルマラソンの過酷さを味わうことになった。孤独と戦いながらもなんとか足を動かし、気力だけでなんとかゴールすることができた。

さて、もちろんNさんはまだゴールしていなかった。いくつか設けられている関門を時間内に通過しないと関門が閉鎖され、レースは強制終了されてしまう。彼女の膝はどうなっているだろうか……そんな心配をしながら待つばかりだった。

感動の再会! そしてNさんのレース展開にびっくり

どのくらい経っただろうか。しばらくしてNさんが無事にゴールしたのである。再会できた喜び、走り切ることができた喜び……たくさんの喜びを分かち合った。話を聞くと、やはり関門はギリギリのタイムで通過してきたようだった。

しかし、その後帰り支度をしながらレースのことを振り返っていると、Nさんの口からは「それにしても25kmのところにあったバナナがおいしかった」「その次の麺もおいしかったよね」「その次にあったお菓子も最高だったよ」と食べ物の話ばかり。Nさんは関門ギリギリのタイムだと言うのに、給食所を全て利用していたのだ。

“楽しむこと”の大切さ

フルマラソンでは相当のカロリーを消費するため、もちろん給食所に立ち寄ってエネルギー補給をすることは大切だ。しかし、関門通過できるかできないかギリギリのタイムだというのに驚きである。

しかも、普段からNさんは時間をかけてゆっくり食べるタイプだ。食べることが大好きで時間はかかっても驚くほどの食べ物が彼女の胃袋に消えてゆくのだ。給食所でもさぞ時間をかけて味わいながら食べていたのだろうなと思うと、なんだか笑みがこぼれた。

レース終了になってしまうリスクよりも食を楽しむことを選んだ彼女であったが、本人は「食べ物が楽しみでなんとか最後まで走れたよ。全部食べないとなって思って」と話した。これは彼女の一種のプライドなのだろうか。

結果的にギリギリのゴールではあったが、「なんとしても完走しなければ」「何時間以内でゴールしなければ」というプレッシャーがない方が、案外うまくいくこともある。スポーツは結果ばかりが重要ではなく、まずは「楽しむ」という気持ちが大切なのかもしれない。そして食が与えてくれる力の大きさを改めて実感した出来事であった。

【体験者:30代・女性、回答時期:2026年10月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

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