訳ありの部長選考
高校2年生の夏。3年生の先輩も引退し、ついに私たちへと代替わりするにあたって、新しい部長の選出が行われた。部長はTさんに決定したのだが、満場一致というわけではなかった。記録に関しては部内でも上位だったが、へそを曲げると少々面倒なところがあったので、周りは上手くTさんを持ち上げ、機嫌を伺いながら日々練習していたからだ。
しかし、Tさん本人は部長にふさわしいのは自分しかいない、と言わんばかりの自信家。ここでTさん以外の人を部長に選出しても、その後が面倒なことになることも分かっていた。そのような背景もあり、Tさんが部長に選ばれたのである。
2人の行動はエスカレートしていくばかり
そんなある日、部長TさんとマネージャーのSさんの部内恋愛が発覚した。部内恋愛自体に問題はなかったのだが、練習中も2人でいることが多くなったり、喧嘩をしているときは練習中も険悪なムードになったりと、2人の行動は目に余るものがあった。
周りの部員たちは不満が募るばかりであった。しかし、Tさんの機嫌を損ねてしまうと、その後のフォローの方が面倒なのである。それを考えると、今の段階では経過を見守る方が得策かもしれないと判断した私たちは行動を起こさずにいた。
後輩が放った言葉とは
しかし、転機は突然訪れた。やはり部内全体のことを考えて、同学年の私が2人に伝えないといけないのではないかと思っていた矢先、先に行動に出たのは1年生の後輩Kさんだった。Kさんは周りから愛される人間であったが、まさに「自由気まま、派手、ヘラヘラ」というタイプだった。
そんなKさんがTさんに「先輩、ダサいっすよ」と言ったのだ。すると続けて、「俺、先輩のこと尊敬しているんですから」と一旦下げてから上げる、見事なフォロー。普段のKさんのキャラクターからは想像できない発言に私は心底驚き、そして心の中で拍手をした。
Kさんの本音は……?
感心していた私だが、後輩であるKさんから言わせてしまうことになり、申し訳ない気持ちになった。「Kさん、ごめんね。本当は私たち2年生からきちんと2人に話すべきだったのに」と声をかけに行くと、Kさんは再び驚きの発言をしたのだった。
「これで少し大人しくなりますよ、部長は周りからの評価を気にする人だから。練習に私情を持ち込むような人のこと、全く尊敬していないですけどね、ははは!」と軽快に笑った。恐ろしい後輩である。そしてKさんが言ったとおり、Tさんは態度を改めたように見えた。
普段はヘラヘラして何も考えていないように見えたKさんだが、実は人間の本質を捉え、部内全体のことをよく考えている後輩だった。人間、見た目だけでは分からないこともあるのだと痛感した出来事である。
【体験者:30代・女性、回答時期:2026年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。


