新入生へ泳ぎを教えた主将が、小学生時代は逆の立場だったと写真で知ったエピソード。

見覚えのない新入生

これは筆者の勤め先の後輩の大学時代のエピソードです。大学3年生のAさんは、水泳部の主将でした。春の体験入部で、1年生のB君が自己紹介のあと「僕のこと覚えてませんか?」と尋ねます。

名前も顔も思い当たりません。「どこかの大会で会った?」と聞くと、B君は「もっと前です」と答えました。高校時代の試合かと思いましたが、二人は出身地域が違います。

Aさんが首をひねっていると、B君は「あとで見せます」とスマートフォンをしまいました。ほかの新入生も来たため、Aさんはそれ以上聞かず、プールの利用方法と練習の流れを説明しました。

主将が隣で泳ぐことに

初日は無理をせず、普段泳ぐ距離を聞いて練習に参加してもらいました。Aさんも隣のコースで泳ぎ、休憩中にフォームの話をします。

B君は「先輩、昔と全然違いますね」と笑いました。さすがに気になったAさんは、「昔の私、何してた?」と聞きます。

しかしB君は「写真を見た方が早いです」と答えるだけでした。部員に聞かれる前に確認したくなりましたが、練習中は端末を持ち込んでいません。答えは着替えが終わるまで持ち越しになったのです。

写真の中で浮き具を持っていた

練習後、B君が見せたのは、小学生の二人がプールサイドに並ぶ写真でした。片方は浮き具を胸に抱き、もう片方がその端に手を添えています。

Aさんは背景の看板を見て、ようやく思い出しました。夏休みに祖父母の家へ行ったとき、短期の水泳教室へ通っていたのです。当時は顔を水につけるのが苦手で、何度も浮き具を握り直していました。

隣にいた年下の子が「一緒にやろう」と声を掛けてくれた記憶もあります。「あの子、君?」B君がうなずきました。今日、泳ぎを教えた新入生は、昔の自分を助けてくれた子だったのです。

最初の一言を返した主将

写真はB君の母が撮り、最近、進学に合わせて昔の写真を整理した際に見つけたものでした。大学の部の紹介でAさんを見た母が、同じ名前だと気付いたといいます。

主将の姿だけでは信じられず、本人に聞いてみたかったのでした。「あのとき、ありがとう」とAさんが言うと、B君は「覚えてもらえてよかった」と笑いました。

Aさんは翌週の練習予定を見せ、「一緒にやろう」と誘います。昔の一言をそのまま返せたのが、少しうれしかったのです。

【体験者:20代・女性、回答時期:2026年8月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

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