少年野球の応援で叫ぶ父。試合後に相手監督からまさかのお礼の言葉。

作戦まで聞こえる応援席

これは、会社の先輩が息子の試合を観戦したときのエピソードです。

小学6年生のSくんの父は、少年野球の練習を手伝うことがあり、チームのサインもいくつか知っていました。試合の日には早くから応援席へ座り、息子の打席になると身を乗り出します。

ある練習試合で、監督がバントのサインを出しました。Sくんが確認して打席へ向き直ると、父は「バントだぞ、きっちり転がせ!」と大きな声を出しました。

父が期待したねぎらいの言葉

その打席では、投球前から相手の守備が前へ動き、Sくんのバントはアウトになりました。父は「相手はよく読んでいるな」と感心して、その後も打ち方や走り方を声で伝えます。

チームは試合に敗れましたが、片付けの頃、何度か顔を合わせたことのある相手監督が父へ近づいてきました。「今日は声がよく聞こえましたよ」。

父は、にぎやかに応援したことをねぎらわれたのだと思いました。「つい熱くなっちゃいまして」と笑って返し、Sくんの道具袋を持ち上げたのです。

礼を言った相手監督

相手監督は続けて、「バント、構える前に分かったので、守備の準備ができました。助かりました」と言いました。父の手が止まりました。相手がサインを読んでいたのではなく、自分が声に出して教えていたのでした。

隣にいたSくんも「お父さん、ベンチの反対側まで聞こえていたよ」と伝えます。父は母の方を見ましたが、母は黙ってうなずくばかりです。「息子にだけ言っているつもりだった」と父が答えると、相手監督は「よく通る声ですからね」と笑い、自分のチームへ戻りました。

次の打席でのみ込んだ言葉

帰りの車で父は、Sくんに「次から、何て言えばいい?」と尋ねました。Sくんは「頑張れ! 楽にいけ!って言ってくれたらそれだけでうれしい」と答えます。

父は冷静に応援することを心に決めました。次の試合でSくんがベンチのサインを見ると、父はいつものように口を開きかけます。

しかしそこで言葉をのみ込み、打席が終わってから拍手を送りました。ベンチへ戻るSくんが父へ小さく手を上げます。父は母に「今の応援は、相手の役に立ってないよな」と聞き、母は「ちゃんと息子に届いてるよ」と答えました。

【体験者:40代・男性、回答時期:2026年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

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