定年間近でも毎日15kmを走る会社重役
生命保険会社の重役を務めるKさんは、40代から始めたランニングにすっかり夢中になり、今では毎日15kmほど走るほどの市民ランナーだ。目標はフルマラソンで3時間半を切ること。定年が近づいても、その情熱は衰えることを知らない。
仕事の関係で現在は首都圏で一人暮らしをしており、妻と大学生の息子は地元の高知県で暮らしている。離れて暮らす息子とは、なかなかコミュニケーションを取る機会がなかったという。
地元では子供たちにも知られるランナー
ある時、Kさんは四万十川のマラソン大会に出場するため、高知へ帰省することになった。久しぶりの帰省とあって親戚回りや夜の付き合いも多く、少々不機嫌になることもあったが、ランニングだけは別だった。
どんなに忙しくても早朝に起きて走りに出かける。地元でもすっかりランニング好きとして知られており、近所の子供たちから手を振られるほどの存在になっていた。
息子の分まで勝手に大会へエントリー
実は今回の帰省には、マラソン以外にも大きな目的があった。それは、大学生の息子とのコミュニケーションを深めることだった。
しかし、そこはランニングに夢中なKさん。「一緒に大会に出れば仲良くなれる」と考え、なんと息子に相談することなく、勝手にマラソン大会へエントリーしてしまったのだ。当然ながら、息子は激怒。それでも大会の話をきっかけに親子の会話は増え、母親からも説得された結果、結局は親子そろって大会に出場することになった。
昭和の説教が始まり、妻まで激怒
ところが、毎日15kmを走る父親とは違い、息子は普段ほとんどランニングの練習をしていなかった。結局、途中で走れなくなり、完走を断念することになった。
ここでKさんが取った行動が、さらに事態を悪化させてしまう。レース後、息子に対して「最後まで諦めるな」といった説教を始め、さらに社会人としての心構えにまで話を広げてしまったのだ。これには息子だけでなく、妻まで怒ってしまった。息子との交流を楽しむはずだった帰省は、結局、Kさんが予定より早く首都圏の自宅へ戻されるという結末になった。
息子と仲良くなりたいという気持ちは本物だったのだろう。しかし、その方法も価値観も、すべて自分のランニング基準。親子の会話は増えたものの、最後は家族に怒られて帰るという、なんとも不器用な父親のエピソードだった。
【体験者:50代・男性 回答時期:2026年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
Qolyコラムニスト:おかもとたかひで

