中高一貫校のラグビー部に所属していた筆者には、後輩たちから恐れられていたA先輩がいた。練習に厳しく、何かと口うるさいキャプテンだったが、誰よりも努力する姿も見せていた。そんな先輩に対して、後輩たちは複雑な感情を抱いていたという。

2年連続で部長を務めた怖い先輩

筆者が高校1年生の頃、ラグビー部のキャプテン兼部長を務めていたのが、2学年上のA先輩だった。体格がよく、押しの強い性格で、後輩たちからは怖がられる存在だった。

中高一貫校だったため、筆者たちは中学時代からA先輩を知っていた。当時、部長は高校2年生が務めるのが普通だったが、A先輩は2年連続で部長を担当。中学3年生だった筆者たちは、翌年には先輩が卒業すると期待していただけに、もう1年続くと知って肩を落とした。

自分にも厳しいから文句が言えない

A先輩の練習は厳しかった。しかし、本人も誰より走り、ウエイトトレーニングにも励んでいたため、後輩たちもなかなか文句を言えなかった。

特に痩せていた筆者には、体重を増やすように何度も指示。夏合宿では通常の食事に加え、おにぎりまで用意させられた。食事の最後にはデザート代わりにおにぎりを食べるほどで、筆者にとっては練習だけでなく食事も厳しい時間だった。

試合に出られなくても指示が止まらない

そんなA先輩にも弱点があった。肩の脱臼が癖になっており、試合に出られないこともあったのだ。

しかし、ベンチの外にいても大声で指示を飛ばし、その姿は監督顔負け。後輩たちは「少しは静かにしてほしい」と思いながらも、先輩のラグビーに対する情熱を感じていた。

実際、大事な試合で途中交代になった際には、悔しさのあまり涙を流したこともあった。普段は強気で口うるさい先輩が見せた涙に、誰よりも本気でラグビーに取り組んでいることだけは伝わってきたという。

卒業しても部活に現れる先輩

やがてA先輩は卒業し、体育大学へ進学した。ようやく厳しい先輩から解放されたと思った後輩たちだったが、話はそう簡単ではなかった。大学生になってからもA先輩は頻繁に母校の練習へ顔を出し、後輩たちは内心「大学へ行ってくれ」と苦笑いしていたという。

そして現在、A先輩は母校のラグビー部で指導する立場になっている。後輩たちにとっては怖くて口うるさい存在だったが、ラグビーに対する情熱だけは誰にも負けなかったA先輩。結局、誰よりも長く母校のラグビーに関わり続けているという、なんとも先輩らしい結末だった。

【体験者:50代・男性、回答時期:2026年10月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

Qolyコラムニスト:おかもとたかひ

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