動画から消された補欠選手
これは、私の高校時代の友人から聞いた話です。高校体操部で、友人は団体戦の補欠でした。
ある日、公式戦に出場するメンバーを決定するために、演技の動画撮影が行われました。しかし、主将はレギュラーだけを評価し、「補欠の演技は採点外」と練習動画から友人の映像を削除したのです。
友人が理由を尋ねても、「本番に出ない人へ時間は使えない」と答えました。友人は悔しい気持ちを堪えつつ、昼休みにマットを借り、助走の歩数を一定にする練習を続けたそうです。
撮影係の時間も、減点されやすい姿勢を覚える機会へ変えました。自分の演技は固定カメラで毎日必ず撮り、着地のずれや技の難度をノートへ残しました。
主将だけが決めた出場順
大会2週間前、団体メンバーを決める部内選考が行われます。本来は顧問と外部コーチが全員を見る予定でしたが、主将は友人へ開始時刻を遅く伝え、先にレギュラーだけで終えようとしました。
友人が体育館へ着くと、得点表はすでに記入済みです。主将は「遅刻したから失格」と告げます。しかし、友人が受け取った連絡画面には、主将が連絡した時刻がはっきり残っていました。
本当の採点はここから
顧問は主将が送った連絡を確認すると得点表を伏せ、「主将に選手を失格にする権限はない。本当の採点はここから」と全員の再演技を指示します。
友人は最後にゆかへ立ち、得意なターンから着地まで、大きなミスなく演技を終えました。難度はレギュラーより低くても減点が少なく、総合点で3番に入ります。
一方、主将は高難度技の着地で乱れ、友人より下の点数でした。顧問は、審判資格を持っており、公式戦さながら、公平にジャッジしたそうです。
採点表に残った全員の名前
友人は団体メンバーに選ばれ、主将は補欠となりました。メンバーを外れた主将は、大会では器具準備を担当し、自分が外していた仕事の重さを知ったそうです。
友人たちは予選を突破し、県大会へ駒を進めました。主将も県大会からメンバーへ戻ったそうです。その後、主将はメンバーと補欠を差別することなく、裏方の仕事も一生懸命取り組むようになりました。
現在、友人は子どもの体操教室で、指導にあたっています。発表会へ出ない子の演技も同じように撮影し、アドバイスします。「体操を好きでいてほしい」が彼女の口癖です。
【体験者:30代・女性、回答時期:2026年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。


