速く走る電車を選んだ先輩
これは、会社の先輩から聞いた、息子さんの部活動での話です。中学2年生のA君は、陸上部の記録会へ向かうため、同級生と駅で待ち合わせました。
競技場の最寄りは、普段は使わない小さな駅です。顧問から届いた案内には、普通列車に乗るよう書かれていました。
そこへ到着した3年生の先輩2人が、ホームに入って来た快速を見て「これに乗ろう」と駆け出します。A君が案内を示すより早く、1人はもうドアの前に立っていました。
「快速の方が早いだろ。ほら、閉まるぞ」と手を振られても、A君たちはホームに残ったのです。
ついて来なかった後輩へ電話
先輩たちを乗せた電車が出ると、すぐにA君の電話が鳴りました。「乗らないと集合に遅れるぞ」という先輩に、最寄り駅には普通しか止まらないと答えます。
ところが先輩は、「手前の大きい駅で降りれば歩けるだろ」と言いました。その駅から競技場までは、案内の地図で見てもかなりの距離があります。
集合時刻だけでなく歩く区間も調べていたA君は、「そのまま先へ行かないでください。次の駅の停車案内を見てください」と頼みました。
すると、電話の向こうが静かになったそうです。
窓の向こうへ通り過ぎた駅
快速は、手前の大きな駅を出た直後でした。競技場の最寄り駅が、窓の向こうを通り過ぎます。
「今、駅名が見えた」と気づいても、先輩たちは降りられません。その先の停車駅まで乗り、折り返して戻ることになったのです。
一方、A君たちは予定どおり普通列車で向かい、先に競技場へ到着しました。顧問に事情を伝えると、先輩たちからも折り返して来ると連絡が入りました。
2人は集合に少し遅れたものの、顧問が確認すると出場種目の招集までは時間があり、準備を整えて出場できたそうです。
帰りの案内役は決まっていた
帰りに駅へ向かうと、あの先輩が改札の前で足を止めました。口から出たのは「帰り、何番線?」という一言です。
A君が発車案内を見ていると、もう1人の先輩も横から時刻を確かめます。目の前に快速が入って来ても、今度は誰も走りません。
「まじで人の話はしっかり聞かないとな」と先輩が言い、A君たちは笑って快速を見送りました。
次の記録会の案内を部で確認したとき、先輩は集合時刻に続けて、乗る列車の種類も読み上げたそうです。
【体験者:10代・男性、回答時期:2026年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。


