歓声を上げただけで「野蛮だ」と言われた九州
私の娘は、アイスホッケーをしています。娘が小学4年生の時、娘の競技環境を整えるため、私たちは九州から北海道へ移住しました。
アイスホッケーには、選手同士が体をぶつけ合う「接触プレー」の場面があります。
以前いた九州では、その接触プレーが起こると観客席から悲鳴が上がり、少し歓声を上げただけで「野蛮だ」と言われる環境でした。
夫が出場した成年男子の試合で、接触プレーに歓声を上げていた私は、近くの席の保護者から「ちょっとそれ、野蛮だからやめた方がいいよ」と言われたこともあります。
観客席で声援を送る時も、まわりの目を気にする必要がありました。私にとっては、それが当たり前の環境でした。
練習の合間のフードコートで
北海道に移住してからのある日のことです。その日は練習が2コマあり、お昼をまたいだため、合間にお昼ご飯を食べることになりました。チームの保護者たちと、リンク近くのフードコートへ行きました。
食事をしながら話していると、一人の保護者から「九州では、ホッケーはどんな環境だったの?」と尋ねられます。
私は、接触プレーに対する考え方や、少し乱暴なプレーが起きると悲鳴が上がることなどを、深刻になりすぎない程度に話してみました。
「当たり前にそんなのがないと、面白くもないよね」
話を聞いた保護者は、「アイスホッケーなのに、そういうのを知らないのかな? 当たり前にそんなのがないと面白くもないよね」と言いました。さらに、「氷上の格闘技っていう言葉も知らないのかな」と続けます。
九州では「野蛮だ」と言われた接触プレーが、ここでは「ないと面白くない」ものとして語られていました。
「娘ちゃんは、ここからだね」
そして保護者は、「娘ちゃんは、ここからだね。アイスホッケーが本当に楽しくできるのは」と言ってくれました。
同じ価値観を持つ人が、すぐそばにいる。そう分かったことで、私の気持ちはすっと楽になりました。
今も私は、試合のたびに変わらず大きな声で声援を送り続けています。悲鳴も「野蛮だ」という言葉も、もう気にする必要はありません。
娘のアイスホッケーは、ここからです。
【体験者:30代・女性、回答時期:2026年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。


