日本代表は、田中マルクス闘莉王をはじめ、“帰化”を行った選手が代表チームで多く活躍を残してきた。

近年ではあまり見かけることがなくなった「帰化選手」だが、黎明期の日本サッカーに彼らが残していったレガシーははかり知れない。

ヨーロッパや南米と比較して、サッカーが発展途上の国も多いアジアでは、数多くの帰化選手が現在も活躍している。

13日に実施されたワールドカップアジア最終予選 アラブ首長国連邦(UAE)対イラクの試合でも、UAE側のメンバー表には、鹿島アントラーズで活躍し、後にUAE国籍を取得したFWカイオをはじめ多く帰化選手が名を連ねていた。

こうしたアジアサッカーにおける「帰化戦略」について、英紙『Guardian』は先週、ワールドカップのアジア枠拡大が帰化選手の増加を推進しているとの論考を掲載した。

2026年のワールドカップにおいて、アジアの出場枠は従来の4枠から8枠に倍増した。

かつての4枠は日本、韓国、サウジアラビア、イラン、オーストラリアらが地域の強豪国として、アジア予選を“支配”していた。アジアサッカー連盟に所属する国の中で、ワールドカップ本戦に複数回出場経験がある国は上記5か国と北朝鮮のみなのだ。

こうした背景から、大半のアジア諸国にとって「ワールドカップ本戦に出場する」ということは夢のまた夢であり、そのモチベーションは決して高いものではなかった。

しかしながら枠が倍増した2026年大会では、既にウズベキスタンとヨルダンが出場権を獲得するなど、非強豪国でもワールドカップを目指すことが現実的になり、アジアのサッカー熱は一気に急騰した。

AFCの執行委員会に所属するシャジ・プラバカラン氏は「この拡大は、帰化への意欲を刺激しました。ワールドカップ出場枠が増えれば、世界中の国々にとって希望が増し、チャンスが増えることを意味します。国々が帰化を追求すれば、質、パフォーマンス、結果を迅速に向上させることができ、出場権を獲得するチャンスが得られると感じています」とコメントを残し、アジアにおける帰化の急増について、ワールドカップの出場枠拡大であると認めている。

こうした近年のアジアにおける帰化戦略の最も象徴的な国はインドネシアだろう。

昨月、ワールドカップ本戦出場を逃してしまったインドネシアであったが、今大会の結果は1938年にオランダ領東インドとして出場して以来、最も本戦出場に近づいていた。

その背景には帰化戦略があり、一時期のインドネシア代表の先発メンバーには、ヨーロッパ出身選手が8人も名を連ねていた試合もあった。

特に印象的なのはかつての宗主国オランダとの関係性で、帰化選手の多くはオランダにルーツがあるほか、オランダ代表のレジェンド、パトリック・クライファートの監督就任も話題となっていた。

他方で、帰化戦略には負の面も存在する。インドネシアと同じく東南アジアのマレーシアでは、サッカー協会がラ・リーガ(スペイン)などのトップカテゴリで活躍する複数の選手の書類を偽造し、代表資格の停止、選手の出場停止をはじめとした厳しい処分が下されている。

アジアで巻き起こる帰化ブーム。日本同様、帰化選手の活躍がレガシーとなり、サッカー強豪国として定着できるだろうか、今後に注目だ。

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