DF米倉恒貴が“フクアリの奇跡”の再現を誓った。

J2ジェフユナイテッド千葉は今月25日、千葉市内のユナイテッドパークで公開練習を実施。29日の午後2時にホームのフクダ電子アリーナでキックオフするJ2最終節FC今治戦に向けて、チーム最年長37歳の米倉が意気込んだ。

フクアリの奇跡を起こすしかない

再びフクアリで奇跡を起こしてみせる。

J2第37節を終えて3位につける千葉。首位V・ファーレン長崎とは勝点3差で、2位水戸ホーリーホックとは勝点1差となっている。

前節大分トリニータ戦(1-0)でJ1昇格プレーオフ(PO)圏内となる5位以上は確定させたが、試合後に満足する選手はいなかった。イレブンはJ1自動昇格だけを見据えている。

J2優勝の可能性も残す中、自動昇格するためには29日の同時刻に行われる徳島ヴォルティスvs長崎、水戸vs大分の試合結果も影響する。

それでも米倉は「運はジェフの味方をしてくれていると思う。昔の“フクアリの奇跡”じゃないですけど、そういった何かすごくいいことが起こるんじゃないか」と、この状況をポジティブに捉えた。

2008年シーズンのJ1最終節FC東京戦で起こった“フクアリの奇跡”。千葉がJ1残留を果たすためには、FC東京に勝利した上で、別会場で試合をしていたジュビロ磐田と東京ヴェルディの敗戦が条件だった。

試合は2得点をリードされる苦しい展開だったが、後半29分以降にわずか11分間で4得点を奪い、2-4で逆転勝ち。磐田、東京Vが敗れたため、千葉が残留を決めた。

米倉はあの奇跡の再現を誓う。

画像: 今季のフクダ電子アリーナ(C)Getty Images

今季のフクダ電子アリーナ(C)Getty Images

「昔の奇跡的に残留したときもすごかったし、また奇跡が起きるでしょ、起こすでしょ。たぶんあれを覚えている人も多いし、サポーターのみんなが『あのときも奇跡が起こったし』みたいな良い気持ちを持っていれば、パワーって発揮されると思うんですよね。

逆にこの状況で俺らが上の順位にいたら、『もしかしたら…』ってみんなが思っちゃうかもしれないけど、今回はもう勝つだけ。みんながそのテンションで一つになれば何かが起きる」

米倉の武者ぶるいが、こちらにまで伝わってくるような取材だった。

大一番を控えたこの日、全体練習後もスプリントとジョギングを交え、コンディションを整えた米倉。「何だかやばいですね。毎日いろいろなことを考えています。ついに来たっていう感じです」と興奮が隠し切れない。

「もう感情が…。いろいろな感情が爆発しそうなので、昇格が決まるまでは爆発しないように抑える感じ。優勝したときのイメージとかを、常に考えちゃっていますね。

でもちゃんと試合に向けていいテンションで臨めるようにはしたい。負けたときのことはもう考えないです。負けたら負けなので、そのとき考えればいいんですよ。いまは勝ったときのイメージだけをしておいて、試合が終わった後にはじけたいですね」

画像: 全体トレーニング後に走る米倉(写真:浅野凜太郎)

全体トレーニング後に走る米倉(写真:浅野凜太郎)

米倉はここまでリーグ戦10試合に出場。昨季から続いたケガの影響もあり、今季序盤はメンバー外の日々も続いた。

それでも今季のJ2第18節レノファ山口FC戦(0-0)で復帰を果たすと、FWの位置から果敢にゴールを狙い、ブランクを感じさせない見事なオーバーヘッドシュートでスタジアムを沸かせた。

「まずそもそも普通にプレーできるようになったのがうれしかった。治らなかったので、去年の状態だったら、ちょっともうキツいかなっていう状態でした。

でも復帰してからは大きなケガなくやれているので、その時点で気持ち的にはすごく充実している。なおかつチームがすごくいい状態、雰囲気でやれている。本当にいいチームだなって日々感じるし、だから『何としても』というのが強い、強すぎるね。強すぎてあふれ出してきてそう」

画像: 笑顔の米倉(写真:浅野凜太郎)

笑顔の米倉(写真:浅野凜太郎)

小林慶行(よしゆき)監督3年目となる今季、指揮官の下で積み上げてきた攻撃的なサッカーは多くのファンを魅了。第37節終了時点での今季のホームゲームにおける平均入場者数は1万5352人となっており、J2全体で2位を誇る(1位は長崎の1万5877人)。

今年5月6日に国立競技場で行われたJ2第14節RB大宮アルディージャ戦(1●2)の影響も大きいが(入場者数4万9991人)、昨年の平均入場者数が1万0431人で一昨年が8523人と、着実に千葉の試合を観に来るサポーターは増加。

オリジナル10の名門に、再び活気と強さが戻り始めている。

画像: プレスする米倉(C)Qoly

プレスする米倉(C)Qoly

米倉も「すごいですよね。監督の力だと思います。慶行さんになる前の年とかは、正直(優勝することは)夢のまた夢みたいな状態になってしまっていたので…。そう考えたら、本当にすごくいいチームに仕上げてくれた」と、指揮官の手腕を誇る。

そんな小林監督が就任時からここまで一貫して掲げてきたスローガンがある。それは「一体感」だ。いまの千葉は、まさにその言葉が似合うチームになった。米倉は指揮官の掲げたスローガンが、千葉にとって最もポジティブな変化になったと胸を張った。

「一体感ってそんなに簡単に生まれるものでもないと思っていました。でも補強も的確で、ちゃんと真面目にやる選手が集まった。これだけ長い年数をやっているけど、一番一つになれている感じがします。

腐ったりしてしまう選手が出てくるものなんですけど、みんなが同じ方向を向いてやれているすごくいい雰囲気のチーム。だからチームっていう意味では、もう胸を張って1位で優勝でいいと思います。だから、あとは結果だけ」

画像: 小林監督(中央)と抱擁する米倉(写真:浅野凜太郎)

小林監督(中央)と抱擁する米倉(写真:浅野凜太郎)

J2最終節、サポーターとともに最高の雰囲気でJ1復帰をつかみ取りたい。現時点で最終節には、今季フクアリ最多となる満員のサポーターが詰めかける予定だという。

「俺も自分に得点を取ってほしいです」とニヤリと笑った米倉だが、すぐさま「だけどそんなことはどうでもいい。誰のゴールでもいいし、何でもいいから、もうとにかく勝ちたい」と不退転の覚悟で臨むと決意した。

17季ぶりのJ1復帰がかかる最終節。千葉は再びフクアリの奇跡を起こし、戻るべき場所に帰る。

(取材・文:浅野凜太郎)

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