試合終了後に流した涙
昨季はV・ファーレン長崎に在籍していた若原。同クラブの守護神として、ベガルタ仙台とのJ1昇格PO準決勝に臨んだが、その試合でも3得点を先取されて1-4で敗戦。辛酸をなめた。
「チームは違いましたけど、去年は1-4で負けてしまった。自分の中ではそれがあったから、今年は本当に何としてでもJ1に昇格したいと思っていました。それなのにプレーオフの初戦で3失点をしてしまって、自分が思っていた感じではなかったです」
去年の悔しさを晴らすために『今年こそは』と千葉へ加入するも、リーグ戦開幕前の今年1月16日に右ひざ外側半月板を損傷。「今年はプレーできると思っていなかった」と全治約5カ月の診断を受けた。
それでも懸命にリハビリを続け、第32節の長崎戦(0●2)で復帰した。そこからリーグ戦7試合連続で先発フル出場。苦しい時期を乗り越えてつかんだJ1昇格POの舞台だった
試合中は最後方から声を出し続け、シュートストップとビルドアップでチームを支えた。3失点後も毅然とした態度でゴールマウスに立ち続けたが、申し訳なさでいまにも押しつぶされそうだった。

キャッチする若原(写真:縄手猟)
「俺が3失点しているから、チームが苦しんでいると思ったら、試合中もやばかったです」
一時は敗戦も覚悟した。しかしこのままでは終わらなかった。
千葉は後半26分に奪ったFWカルリーニョス・ジュニオのボレーシュート弾を皮切りに流れを引き寄せ、そのまま続けざまに同32分、38分と追加点を奪取。同42分にはDF河野貴志がコーナーキックからダイビングヘッドを突き刺して逆転に成功した。
その後は大宮に決定機を作らせないまま4-3で勝利。千葉は今月13日午後1時5分にホームで行われる徳島ヴォルティスとのJ1昇格PO決勝に駒を進めた。
試合終了後、若原の目には涙が。守護神の中で押し殺していた感情が、ホイッスルと同時にあふれだした。
「もちろん、勝ててホッとした部分はあるんですけど、それよりも悔し涙の方が大きかったんです。失点の中で俺が一本でも止められていれば、試合は変わっていたと思う。きょうはチームに本当に助けてもらいました」

チームメイトたちから励まされる若原(写真:縄手猟)
仲間たちからは、涙をいじるような形で迎えられた。ミックスゾーンに現れたときも、まだ少し目は赤かったが、既に気持ちは切り替えていた。
「みんなからは『泣くなよ』『まだ泣くのは早いぞ』ってめっちゃ言われて…。でも、これで自分の中では一個乗り越えられたと思います。明日から、またもう一回気を引き締めてやるしかない」
17季ぶりのJ1復帰は目の前だ。若原はこの日の悔しさを糧にし、決勝戦ではうれし涙を流す。
(取材・文:浅野凜太郎、写真:縄手猟)
