ついに報われたドリブラーがJ1へ
指揮官からは「一皮むけた」と称され、千葉加入3年目にしてチームの中心選手として活躍していた椿だったが、ここまではもがき続けたキャリアを歩んできた。
J1横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2019年5月にトップチームデビューを果たしたが、同クラブでの日々は苦難の連続。同年に左反復性肩関節脱臼のケガを負うと、コンディションを戻しきれず。他クラブへのレンタル移籍を繰り返し、2023年にJ1リーグ未出場のまま横浜の名門を去った。
今季はこれまでの悔しさを晴らすシーズンとして、人一倍覚悟も大きかった。
「試合に出ているからこその責任も感じていました。今シーズンを通して僕が意識していたのは、自分がいいプレーをすることよりも、まずはチームのために走る部分。精神論になってしまいますが、技術的なことよりもチームのためという気持ちを一貫してきました」
ドリブラーとしての欲を捨て、守備に徹した試合もあった。この日もベンチから声を出して、仲間を鼓舞し続けた。

J2最終節の椿(写真:縄手猟)
すべてはこのチームでJ1に戻るためだ。
「僕はまだ3年間しかいないですけど、3年間でこれだけこのクラブを好きになって、サポーターとも一つになれたと思うと…。でも僕よりも、サポーターやヨネくん(DF米倉恒貴)、ジェフをずっと応援し続けた人は、もっとすごい気持ちになっているんだろうな」
そしてついに待望の瞬間がやってきた。
後半24分にFWカルリーニョス・ジュニオのヘディング弾で先制した千葉は、最後までこの1得点を守り切って勝利。17季ぶりのJ1復帰をフクアリで決めた。

試合前にサポーターが披露したコレオ(写真:縄手猟)
「あまりサッカーの神様とかは言いたくないですけど、きょうは本当に味方をしてくれたのかなって。本当に最高の気持ちです」と、椿にとってもこれまでの努力が報われた一戦だった。
来季はついにJ1で戦える。J2の中で屈指のドリブラーに成長した椿にとっても、自身の価値を証明する機会になるはずだ。
まずはケガを完治させて、待望のJ1デビューを飾りたい。
「サッカー選手である以上は、J1のピッチで躍動することは誰しもの目標だし、自分にとっても初めてのことになる。そこに高ぶる気持ちがあるので、ケガをちゃんと治した自分が、いままで育ててもらったクラブにどこまでできるのか、成長した姿を見せられればいいと思います」
来季はさらなる飛躍を遂げてみせる。

J1復帰を喜ぶ千葉イレブン(写真:縄手猟)
「もう一つ、二つレベルの違う自分で出さないといけない」と、すぐさまJ1での戦いを見据えた椿。J1の猛者たちを抜き去るイメージはもうできている。
(取材・文:浅野凜太郎、写真:縄手猟)
