磐田内定でも慢心はない
流通経済大柏は高体連で最多となる4人のJリーグ内定選手を擁しながらも、増田と島谷のみが先発メンバーに名を連ねた。
左サイドバックでフル出場した増田は「プロ内定者だからといって、必然的にスタメンで出られる甘い環境ではない。それぞれがいい緊張感でやる気を持っています」と、満員のスタジアムで実力を披露した。
サイドを駆け上がってボールを受ければ、左足で高精度のパスやクロスボールを供給。守備でも決してサボらずに、上下動を繰り返した。
「米子北さんは背後に落としてくるボールが得意なので、そこは警戒していました。細かいところですが、ラインを1メートル上げる、もしくは下げる部分を意識していました。そこはぬかりなく、甘えずにきびしい目を持ってやれました」

サイドを駆け上がる増田(右、写真:浅野凜太郎)
少ないタッチでボールを動かし、相手の背後を狙い続ける“スモールフィールド”を掲げた流通経済大柏は、MF古川蒼真(そうま、2年、FC多摩ジュニアユース)の2得点と、FW大藤颯太(そうた、3年、成田SC、東京ヴェルディ内定)のペナルティキック弾を守り切って、3-0で勝利した。
「まずは1試合で終わらなかった安心があります」とうなずいた増田だが、すぐさま悔しさをにじませた。
「個人的にはもっとやりたかった。本当なら自分がもっとボールを引き出して、攻撃の起点にならないといけない。だけどそのプレーを多くは出せなかったので、悔しさも残る試合でした。きょうは納得できるボールもあまり蹴れていませんし、毎回イメージ通りにできないと意味がない」

パスコースを探す増田(写真:浅野凜太郎)
1月2日の午後12時5分に同会場でキックオフする3回戦は、大分県立大分鶴崎高(大分県代表)と対戦する。
ダブルキャプテンの一角として流通経済大柏を助けたいと意気込んだ増田は、アシストだけではなくて得点も狙う。
得意の左足で所属チームのピンチを救ってきた中村俊輔氏のように。
「磐田時代のプレーも含めて、中村俊輔さんはあの左足でゲームを決められるのが本当にすごい。いまの自分はいいボールを上げるチャンスメイクが多いけど、中村俊輔さんは自分で決め切る力を持っている。尊敬していますし、目標にしています」

プレースキッカーを任された増田(写真:浅野凜太郎)
増田の選手権が幕を開けた。レフティーのキックが流通経済大柏を2007年以来18年ぶりの優勝に導く。
(取材・文・写真:浅野凜太郎)
