日本人選手は献身的で、素晴らしい才能を持っている

写真提供:PSG 日本5都市でのアカデミー開講に先立ち、記者会見に臨んだマケレレ氏(右から2人目)
「レアル・マドリード在籍時代に出場したトヨタカップ(2002年12月)以来、23年ぶりの来日」というマケレレ氏は、「前回訪れた時よりも街の雰囲気が少し静かで、多くの変化を感じる」と日本の印象を明かすと、本題について話題が及んだ。
――今回は、2026年4月に日本で開講するPSGアカデミーに関する業務のため、来日されたそうですね。
その通りです。私は現役を退いた今もPSG(パリ・サン=ジェルマン)と協力関係にあり、世界中の各国で運営しているアカデミーの選手たちを、PSGに推薦してきました。私はPSG「をフットボールにおける世界最高のチームの一つ」と考えているので、これまでにアカデミーから招き入れた多くの若手選手が、チームに加わり、その活躍によって新たな歴史を築いていく姿を見て、とても嬉しく思っています。
――なぜ、日本での開講を決断されたのでしょう?
日本には若くて優秀な選手がたくさん揃っています。PSGアカデミーでプレーし、実力を磨いた選手たちが、将来PSGのトップチームでプレーすることも、決して夢物語ではありません。新たな才能を見つけ出し、それを磨くことで、やがてサッカー界の変革を及ぼすことができると思っています。
――日本人選手の強みは何だと思いますか?
多くの日本人選手はフットボールでの成功を願い、真面目で規律を守り、献身的にプレーしてくれます。日本のサッカー界が、厳格な規律とともに発展してきたことを知っていますが、私もフットボールに取り組む上で、これらは本当に大切な要素ですし、日本人選手の優れた点だと感じます
――今年6月には北中米W杯の開催を控え、日本代表への期待も日に日に高まっています。日本サッカー界がさらなる成長を遂げるために必要な要素は何ですか?
現代サッカーは、まるでロボットのように、指示を的確にこなすことも大切ですが、それ以上に自由な発想が求められます。日本の指導者なら、きっと言葉の本質を理解してくださると思いますが、もしさらなる自由を手にできたら、日本代表はもっと素晴らしい功績を残せるでしょう。今はW杯ベスト16が最高成績ですが、準決勝、決勝に進むことも夢ではありません。
――マケレレさんがベルギーリーグのオイペンで指揮された際には、豊川雄太(現、RB大宮アルディージャ)選手の活躍で、チームが劇的な残留を果たしました。
豊川雄太選手はすぐにチームに馴染み、PSGから来た若手選手と一緒に成長し、多くのゴールを決め、残留に貢献してくれました。今は日本でプレーしているようですが、素晴らしいメンタリティを持つプレーヤーでした
――豊川選手が、マケレレさんを「非常に厳しい監督」と語っている記事を拝見したことがあります。
そうだね(笑)。僕は選手たちを怖がらせようとしていたわけではなく、ただチームに「規律」を与えたかっただけなんです。プロ選手としてキャリアを歩むのなら、チームの規律をきちんと理解し、その実現に向けて真剣に取り組まなければなりません。
時には、笑ってリラックスする時間も必要ですが、私は『勝負師(コンペティター)』なので、みんなで勝利を掴むためには、どうしてもそのエネルギーが必要でした。もし、僕とプレーした経験が彼の成功に繋がっているのなら、本当に嬉しく思うよ。豊川選手は本当に“いい奴”だからね

写真提供:PSG
ーー 一緒にプレーされた豊川選手以外にも、マケレレさんの印象に残っている日本人選手はいらっしゃいますか?
どちらかと言えば個人よりも、勝つために一丸となってプレーする。「集団(コレクティブ)」としての印象が強いかな。
ただ、日本代表の試合を見ていると、「突出した実力を持つストライカーがいれば、さらに上にいけるんじゃないか?」と感じることがある。
優勝を勝ち取るには、集団であることも大切ですが、フランスのエムバペやデンベレのような「天才」も必要です。日本代表は本当に良いチームですが、そういった選手が出てくれば、さらに上を目指せるんじゃないかと思う。
未来のエムバペが日本から生まれる日も近い

写真提供:PSG
――PSGアカデミーが多くの才能に溢れる選手を輩出できているのはなぜでしょう?
かつては、他のクラブからビッグプレーヤーを連れてくるのがPSGの主流でしたが、方針を変更し、スター選手と若手選手を融合させたチームづくりを進めるようになったことが大きいんじゃないかと思います。
フランスには各地に素晴らしい才能が眠っているからね。彼らをPSGに招き入れてプレーの機会を与えたら、自ずとチームの力になってくれるんだ。
時に大人としての振る舞いを理解させたりする場面もあるけれど、彼らは経験豊富な選手たちからさまざまなことを吸収し、すぐにPSGに適用してくれる。今では16〜17歳でプロ選手としてのキャリアをスタートさせることも一般的になってきているし、PSGはリザーブチームも備えているから、最高の人材が才能を磨くに相応しい環境が整っていると思うよ。

写真提供:PSG
――PSGの育成モデルが、日本で成功を収めるために必要なことは何ですか?
PSGは若手選手の才能を見極める能力を持ち併せているから、多くの都市から若い選手を見つけ出し、成功へと導かなければならない。日本は広いから、まだ誰も気づいていないような若い才能がまだまだ潜んでいるんじゃないかと僕らは思っているんだ。そう遠くない将来、日本から「未来のエムバペ」が生まれる日が訪れるかも知れないよね。
――夢は膨らみますね。
最近は、日本の若手選手がベルギーやオランダに渡るケースが多いけれど、彼らがPSGを選んでくれて、チームのスター選手になってくれるのなら本当に素晴らしいことだよね。
でも、それを実現するには、まずは本国フランスのアカデミーで成功していなければならない。自分たちのところで成功していなければ、外でアカデミーを作って最高の若手を連れてくるなんてことは不可能だからね。
PSGもこの点については、長年に渡って苦労してきたんだ。でも、それを正したことで、多くのトロフィーを獲得し、チャンピオンズリーグで勝ち始め、トップレベルに到達できた。
そして、これによって初めて、外部の若いトッププレーヤーたちに夢を与えられるようになりました。PSGは若き才能を呼び込むために、最高のエデュケーター、最高の分析官、最高のリクルート人材を揃えました。彼らが世界各地を飛び回り、若手選手に「うちに来れば成功できる」と伝えるんだ。多くの時間を要しましたが、ようやくPSGは、素晴らしい結果を得ることができたと思っているよ。
――マケレレさんは、今後来日されるご予定はございますか?
私はUEFAの仕事も任されているから、すぐに来日することは難しいかもしれないけど、また何らかの機会で日本に来ることができたらと思っているよ。PSGのアカデミーには素晴らしい指導者や、もしかしたらPSGでプレーする選手が来るかもしれないので、そちらも楽しみにしていてほしいです。
取材:白鳥 純一 通訳:大川 佑

