1999年、元アルゼンチン代表のGK、そしてセブンスデー・バプチスト派の敬虔な信者であるカルロス・ロアは宣言した。「自分は引退する。」いったいなぜ?「神様は、土曜日にプレーすることをお許しでないから。」それだけではない。「西暦2000年に世界は終わる。戦争、災害、飢饉・・・神様と心のつながりを持たない人たちは災厄に見舞われるだろう。」そこで彼はアルゼンチンの田舎に引っ込み、農場で世界の終わりを待った。2001年になり、世界は終わっていなかったので彼はスペインに戻ってサッカーを再開した。マンチェスター・ユナイテッドとアーセナルからオファーが来た名GKにとって、単なる農場主としてあと40年を生きるのはどう考えても物足りない。
我々日本人にはなじみが薄いことかもしれないが、信仰より大事なことはないと考える人は世界中にいる。クロアチアの名MF、ズボニミール・ボバンは「信仰心を持たない人と深い関係になることは考えられない。」と言った。神の教えに従い結婚するまで純潔を保ったというカカーは、引退後は牧師になることを考えているそうだ。
わけのわからない髪形で有名だったタリボ・ウェストもまた、信仰に生きたサッカー選手だ。サッカーの才能によってナイジェリアのスラムから抜け出したウェストは、チンピラで一生を終えなかった幸運を神に深く感謝した。「自分にはこの幸運を広める使命がある。」そう考えたウェストは牧師となり、ミラノでプレーしている間、アフリカ系移民のために説教を行った。ダービー・カウンティに移籍しても説教は続いた。何度も無断でイタリアに飛ぶウェストにダービーの首脳陣はおかんむりだったが、彼にとっては信仰に勝るものはなかったのだ。
ウェストほどではないが、信仰ゆえに批判を浴びることもある。筆者の友人の一人はムスリムでガラタサライのファンだが、彼に言わせれば厳格なムスリムの家庭で育ったエムレ・ベロゾールは、「原理主義者すぎる」らしい。厳格な政教分離をうたうトルコでは、プールに入るときも肌を見せないようなエムレの姿は奇妙に映るのかも知れない。
グラハム・ハンコックの著書『神々の指紋』によれば、世界は2013年に大きな危機を迎えるらしい。アルゼンチンのサッカー協会が学習したのなら、早めに信心深くないGKを見つけておいた方がいい。あの本がインチキかどうかは置いておいて・・・。