昨年の11月9日にパウロ・ベント監督が辞任し、カルロス・カルヴァリャルを新たな指揮官に迎えて再スタートを切ったスポルティング・リスボン。新体制の初戦となった11月22日のタッサ・デ・ポルトガル(カップ戦)では4点を取り快勝。さらにベンフィカとのリスボン・ダービーを引き分けで乗り切り、決して悪くはないスタートを切った。しかも12月から1月末にかけて公式戦7連勝を飾るなど、結果を出し始めていた。
ところが1月の終わり、首位を走るブラガに0-1で敗北すると状況は一変した。カップ戦ではポルト、ベンフィカに大量得点を叩き込まれて完敗。さらにその間にあったリーグ戦では、残留争いの渦中にあるアカデミカにも敗れてしまい、公式戦4連敗を喫したのである。
カルロス・カルヴァリャルが就任してからというもの、スポルティングのサッカーは大きく様変わりしている。プレッシングからの早い攻撃を狙うショートカウンターを取り入れ、フォーメーションも就任当初は4-2-3-1を使用。高い位置からのプレッシャーを狙い、ミゲル・ヴェローゾを左サイドハーフにコンバートするなど、「自分の色」を強く出した指導を行っていた。引き分けた昨年12月のベンフィカとの試合ではこれが機能。ボールを保持して組み立てることに特化していた前体制では見られなかった、「ボールを奪う」ことを起点とした組織が生まれていた。
しかし徐々に弱点が明らかとなってきた。ボランチの一角に抜擢されたアドリアンは、技術は高いものの守備力が弱く、最終ラインとの間のスペースを潰すことを得意としていなかった。また、左サイドバックのグリミの守備力の欠如をカバーすることもできなかった。しかし1ボランチシステムを4年にわたって続けてきたチームには、ミゲル・ヴェローゾを左サイドで使った以上、アドリアンの代わりは存在しなかったのだ。
勝ちながらも弱点を露呈し始めていたチームは冬に補強を加えていった。一人はカウンターに向いたアタッカー。もう一人は攻撃力がある右サイドバック。最後にアドリアンの代わりとなる守備力があるボランチ。それぞれシナマ=ポンゴル(アトレティコ・マドリーから)、ジョアン・ペレイラ(ブラガから)、ペドロ・メンデス(レンジャーズから)である。理論的にはすばらしい補強だ。ボランチの守備力が増加させることで、サイドバックをより攻撃的にできる。さらにシステムにあったストライカーを加えれば得点力アップが狙える。
ところが、補強を加えたチームは大きくバランスを崩してしまったのである。特にペドロ・メンデスが加わり、彼をワンボランチに据えた4-4-2の中盤ボックス型を使用したポルト戦とアカデミカ戦では、両サイドのスペースを狙われて失点した上、展開が狭くサイド攻撃ができないという致命的欠陥を持ったチームになってしまっていた。しかも肝心の新加入選手はといえば、ジョアン・ペレイラはアカデミカ戦で失点の原因となり、ベンフィカ戦ではわずか7分で退場。ペドロ・メンデスはまだ守備力増加の期待に応えられず、シナマ=ポンゴルは1ヶ月経っても全くチーム戦術にフィットしていない。
すでに来シーズンのチャンピオンズリーグ出場は絶望的だが、ヨーロッパリーグの出場権が得られる4位はなんとしても守らなければならない。そのためには、混乱の原因となっている短期的なフォーメーションの変更をやめ、熟成度を高めることが必要だ。カルヴァリャル監督の決断力が試されている。